A032-わたしの歴史観 世界観、オピニオン(短評 道すじ、人生観)

太平洋戦争はほんとうに負けてよかったな

 新たらしいコーナーをつくりました。時事問題や、人生観、歴史観などを綴っていきます。一回目はなにを書こうかな。きょうはトランプ大統領の就任だ。

  映像を観れば、韓国の現職の大統領が逮捕されたあと、賛否に分かれた抗議の人とか、官憲とか、それぞれがすごいエネルギーで争っている。
 かれらは明治時代のころから太平洋戦争まで被植民地を経験し、日本の敗戦のあと平和とはならず、おなじ民族が南北に分かれてし烈な戦争をしてきた。その分断がいまなおつづく。
 映像でみると、一人ひとりが歴史上に生きているな、という感じだ。かれらは地位や立場にかかわらず、自分で考え、発信し、そして自身の意志ではげしく行動している。

 この点では、為政者や組織のトップに従順な日本人と本質がちがうな、とおもう。

 近現代史の歴史小説を書いていると、日本人の本質を身近に感じる。申すまでもなく、明治から太平洋戦争まで、戦火の中で兵士らは個性を殺し、将兵から二等兵まで、一丸となって敵陣に突っ込んで死ぬ。それが玉砕といい、当然なのだ。「ドイツ人は敵の殺し方を教える、日本人は死に方を教える」。ここにも民族性が出ていたようだ。

 下士官から「上官命令は天皇の命令だ」「これらの捕虜を殺せ」と命じられたら、「国際法違反じゃないの」と知っていても、己は銃の引き金を引く。

 資料を見るかぎり、戦地の兵士らはつねに没個性で行動している。戦争でなくても、日本人はとかく画一的 同質的、類型的な体質である。
 日本は単一民族だし、日本人の本質は何だろう。このごろ外国人の日本居留は多いけれど、この際はそれを省いての話しである。
 
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 いまの韓国、および北朝鮮を報道でみていると、戦前の日本の思想・文化・価値観の陰をいくらか感じるも、本質は違うなと思う。かれらの資質は大陸民族である。
 ここで日本人を見てみよう。細長い日本列島で、7000の島があり、縄文時代から1万6000年間の「日本文明」をもって現代におよぶ。日本人とはおおむね紋切り型 没個性、同一行動をとる。

 世界の国々の社会科教科書において、世界八大文明のひとつとして「日本文明」が記載されている。その特徴は現代の日本人の特質、特性にかなり似通っている。いくつか列記してみると、

① 日本の縄文土器は世界最古級の土器文化をもっていた。縄目模様のうつくしい装飾が施されている。実用性だけでなく、芸術性や精神的な意義をもつものであった」

② 伊豆諸島や小笠原諸島と本州との間でも交易がおこなわれていた。縄文時代の航海術はたんなる移動手段ではなく、文化の発展と交流の基盤であった。

③ ヒスイ、琥珀などを素材にした装飾品が多くみつかっている。とくにヒスイ製の勾玉(まがたま)は、交易を通じて広範囲に広まっていた。独自の高度な技術と知識をもっていた。

④ 植物の繊維をつかった織物が作られており、布を染める技術ももっていた。

⑤ 地面を掘り下げた竪穴住居が一般的で、断熱効果があり、夏は涼しく冬は暖かい構造である。

⑥ 弓矢、罠や網、魚釣りの漁労がおこわれ、それら獲物を燻製(くんせい)にしたり、干物にしたり、保存・加工技術も工夫も高度であった。さらに、植物は加工し、毒抜きして保存食にしていた。

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 人間の脳みそは一万年前と現代とさして違わない。考古学がもっと進歩すれば、微分・積分をつかった建造物や土木なども発見される可能性がある。
 ここで考えられるのは、なぜ、災害列島で1万6000年間も一つ民族が滅亡せず生きつづけてきたのだろうか、という素朴な疑問である。くる年も、くる年も、春・夏・秋・冬といずれも大災害がひんぱんに起こる。人間ならば、きっと部族間の激しい戦いもあったであろう。それなのに、日本人という単一民族が廃れていない。世界でも最長の民族である。

 青森県三内丸山遺跡では、巨大な柱を使用した建物跡が発見されている。共同の儀式や集会に使われていたらしい。そこにヒントを見いだせる。「災害時には集団で助け合う。平素からその心構えでいる」。村社会で共同で暮らすからには、画一的 同質的、一律的な没個性で共同の行動をする。その統一精神と叡智が必要である。滅亡しなかった知恵は同一性だろう。
 
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 ところが、いまから80年前の太平洋戦争で「一億総玉砕」と日本民族の滅亡を戦争に利用しようとした軍人の総理大臣がいた。かれが悪いのではない。幼いころから「皇国史観」に染まっていたからだ。
 日本人ならば、全員が一つ枕で死ねると本気で考えていたのだ。戦争が起きても、海外逃亡した日本人は聞かない。
 
 ところで、現代でも日本の社会科教育で、「世界八大文明」の呼称をおしえない。いまだに陳腐な世界四大文明だ。それというのも、皇国史観で、創造神・イザナギとイザナミが国を生み、初代天皇・神武天皇が即位したという。この史観と整合性が取れないからだろう。
 というのも、皇紀元年を西暦にすれば紀元前660年である。ここから万世一系で日本の歴史が歩まれてきた、と岩倉具視あたりが言いだした。それが明治のプロパガンダ「天皇は神聖にして犯すべからず」で、国家統制につかわれた。

 1万6000年間のうち、天皇支配はわずか2700年じゃないか。そこは教えない。

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 皇国史観の下で、日清・日露戦争から、第一次世界大戦、シベリア出兵とつづく。むろん、大本営の軍人は死なない。死ぬのは戦場の兵卒だ。
 2・26事件は昭和維新を掲げたクーデターである。1500人の兵卒はほとんどが農民の徴兵だ。陸士出の上官が、官邸に突入し、首相や元大臣を殺せといわれたら、兵卒は従順に暗殺する。「こんなことはやってはいけないよ」と一人も口にしない。命令に従うのみだ。

 軍人政治は、なんでも軍事が最優先だと思っている。おおむねギリギリのところで国民の生命や安全など考えていない。

 2・26事件のあと泥沼の日中戦争・太平洋戦争へとつづく。1941年7月、アメリカが日本の東南アジアへの侵攻で、石油の輸出を停止した。日本の軍人はさあ大変だ。これでアメリカが攻めてきたらどうする。当時は、石油備蓄量で世界最大とも言われていた日本だ。まだ、1年半はあるぞ。それを使って日本のために、国家・国民のために何をするべきか。そんな思慮は働かなかった。海軍軍人として勇ましさを見せてやる。
「最初の半年から一年は暴れられるが、それ以上は保証できない」。じゃあ、その先はどうするの。自分の尻ぬぐいもできない、戦争のやめ方も知らずして、戦争などやるなよな。それだけの石油があれば、国民生活にまわして3年も持たせれば、その間の米英蘭との外交交渉で石油解禁も得られただろうに。上から下まで、これが言えないのが日本人の特性だ。

 真珠湾攻撃は戦術的には成功したものの、戦略的にはアメリカを徹底的に怒らせる結果となった。暗号は解読されており、本人が乗った飛行機は撃ち落されてしまう。外交文書も軍事司令も敵に筒抜けだから、巨大な軍艦や空母は撃沈されるし、飛行機は追撃される。制海権・制空権は奪われて、B29は思うまま、東京・大阪・名古屋・神戸に焼夷弾を落とす。「まだ降伏しないの」とビラを撒いて、13都市の爆撃を予告する。そして日々に、焼夷弾で毎日何万人と焼死する。

 それでも軍人政治家は戦争のやめ方がわからないらしい。頼みの綱はソ連だけしかない。停戦の仲介を頼む。ソ連にはロシア革命で新しい国家ができたとき、シベリア出兵の日本兵士たちが、七年間にわたって残虐な殺戮をおこなったという怨みがある。(現っ代でもロシアの歴史教科書に載っている)。連合国との橋渡しの仲介などするはずがない。

 日本列島が焦土の焼け野原になっているのに、「国体を守る」と、そんな訳のわからないことを言う。このままでは1万6000年間の「日本文明」をもった日本民族が消滅する危機に及んでも。

 在モスクワの日本大使が、無理難題をつきつけてくる日本の外務省に、電報で、ひとりの国体(天皇)をまもり七千万の日本人を犠牲にするのか、と打電しているらしい。
 このままというべきか為すすべもなく、挙句の果てには外圧(原爆・空爆・ソ連参戦)で終止符を打つべきときに及んだ。
 昭和天皇はさすがに見かねたのだろう、日本民族の滅亡は避けたい、ポツダム宣言を受理して戦争は終わらせたい、と最後の決断を下したのだ。

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 私には小学二、三年のころから島っ子として記憶が残っている。通学のさなかに原爆の話、GHQのマッカーサー元帥の話題が多かった。そのなかでも強く心に残っているのは、友人に「太平洋戦争は負けてよかったんだよ」と語っていた幼い自分の姿だ。
「二等兵で入隊したら、毎日、ビンタ(平手打ち)だって。軍人にはなりたくないものな。日本が負けてくれてよかった」
 私は二等兵、一等兵の立場でいつも自分を見ていた。これはいまでも変わっていない。
 

  注)世界四大文明は、紀元前3000年から紀元前2000年にかけて生まれたメソポタミア文明、エジプト文明、インダス文明、中国文明の4つの文明を「世界四大文明」としている。日本の考古学者、江上波夫が携わった1952年発行の山川出版社の教科書『再訂世界史』だとされている。戦後から7年目で、まだまだ皇国史観の歴史が色濃く残っていたころである。
 ちなみに、欧米やアジアでも、世界四大文明は通じないらしい。

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