おとこのおしゃべり会」 井上 清彦
「おとこだって、おしゃべりがしたい!」
と地元の東京・杉並区「ゆうゆう桃井館」(かつては敬老会館と呼んでいた)の「おとこのおしゃべり会」が誕生した。
それは、2015年の5月のことだ。毎月第4土曜日の夕方4時半から6時半、お菓子とコーヒー付きで参加費は200円、当日参加もオーケーだ。
「おんなのおしゃべり」は、よく知られているが、おとこだって、本音は、おしゃべりしたいのだ。
ヨーロッパに行くと、街角で年配の男たちが、小さな卓を囲んで、談笑している風景をよく目にする。
集まったのは、自主グループで桃井館を使っている、
私が所属している「おとこの台所教室」や「ダーツを楽しむ会」などのメンバーや、募集チラシなどでこの会のことを知って参加した人たちで、最低でも10名が参加している。
新しいメンバーが加わると、全員の自己紹介で会が始まる。
最近はメンバーが固定してきた。年齢は80歳代、70歳代が中心だった。仕事を続けている人はまれ、殆どはリタイア組。「傾聴」など、ボランティア活動をしている人が多いのが特長だ。
出席したメンバーからそれぞれ話題提供がある。これまでの話題には、戦前の北京中学校の想い出、傾聴ボランティア、紙芝居ボランティア、犯罪被害者支援の会の活動などの紹介、短歌を即席で創作したり、尺八演奏もあった。
プロジェクターを使い映像をスクリーンに映して、相続の話、シニアライフの紹介、海外旅の記録などもある。心惹かれた本や映画(地球交響曲など)の紹介、奥様との山歩き、大河ドラマ「西郷どん」の歴史情報や地域などの有益情報もある。
なかには体験に基づく医療情報の紹介もあり参考になる。
テーマがある時は前半に一時間使い、後半は、時事評論などのワイワイガヤガヤが基本だ。
昨年12月の開催日は祝日にあたり、桃井館が休館で、初めて会場を移して、杉並会館マツヤサロンでの忘年懇親会を開催した。暮れの忙しい時期だったが、ほとんどのメンバーが集まり酒も入って話が弾んだ。
今年に入ってからは、メンバーの紹介で、荻窪地域区民センター副会長からプロジェクターを使って「荻窪の記憶(大田黒公園周辺百年の歴史」の講演があり、生まれてこの方荻窪に住んでいる私は、過去の荻窪の風景や日常の暮らしぶりに大変興味を覚えた。
またケア24清水のセンター長から「介護保険制度の仕組み」の講演もあり、高齢化するメンバーにとって身近な事柄であり、関心が高かった。どちらの講演も15名もの出席があった。
もちろん、講師をお呼びするのは、良いテーマが見つかったときだけ、原点は肩肘張らずに、皆で語り合うことだ。
こうした取り組みが注目を浴び、杉並区の取材に「おしゃべり会」が取り上げられた。杉並区の小劇場「座・高円寺」にも出演している若手男優が、「おしゃべり会」でメンバーをインタビューした。この様子が区のホームページ「すぎなみニュース まちかどナウ」平成28年1月31日号に掲載され、また同じ内容が地域のテレビで放映されたこともある。知り合いにもこのことを伝え、「観たよ」との反応が返ってきた。私も登場するのでもちろん見たが、妻は関心がないのか見向きもしなかった。
また茅ヶ崎に住む私の大学クラスメイトは、地元に「おしゃべり会」を発足させるため参考にしたいと見学に来た。終わってから、荻窪の食事処で感想を聴いたところ、「出席者の皆さんの知的レベルが高い」とのことだった。
彼は、その後、地元で「おとこのおしゃべり会」を立ち上げ、活発に活動を行っていて、時々、私宛に報告と、相談がある。
今年4月、私の水彩画を出展した展覧会には、「おしゃべり会」のメンバーの多くが京橋の画廊まで足を運んでくれ、なかには夫妻で観に来てくれて嬉しかった。こうしたメンバーが関連する行事に参加するケースも多々見られる。
私は、「おしゃべり会」誕生前から携わっており、幹事の一人としてメールやパソコンが他のメンバーより強いので「連絡役」を仰せつかっている。課題があれば、幹事たちが集まり解決策を話し合う。
今年で、あしかけ4年目。開催場所のゆうゆう桃井館のスタッフには、いつも美味しい手作りの菓子、コーヒーなど飲み物の準備で、大変お世話になっている。
地域の仲間との友情を育む「ふれあいの場」として、これからも活動を続けてゆきたい。
イラスト:Googleイラスト・フリーより