A055-フクシマ(小説)・浜通り取材ノート

小説取材ノート(39)いわき市=警察犬の捜索

 東日本大震災が発生した2011年3月11日から約1年10か月が経った。各被災地ではなおも行方不明者が大勢いる。捜索活動は、メディアで取り上げられる機会など殆どないけれど、地道に展開されているようだ。

 1月14日、福島・いわき市の新舞子で、警察犬のシェパードを使った捜索を行う男性(46)に出会った。『茨城県警察嘱託警察犬』のIDカードをつけている。民間人だが、警察の依頼を受けた活動である。
 遺体捜索の警察犬による捜索活動は、彼を含めて茨城県で4人だけだと教えてくれた。3.11大震災の発生後から、岩手県・宮古、宮城県・南三陸町など東日本沿岸部に入り活動してきたと話す。

こんかいは福島県警から茨城県警に要請があり、彼はいわき市の沿岸部で遺体捜索活動を行っている。場所を問えば、大津波が襲来した全域だという。

 いわき市内の登間、久ノ浜、薄磯の3か所は、大津波による全滅の集落である。被災地を訪ねると、すでに家屋の解体、ガレキの撤去は完了し、建物の土台しか残っていない。と同時に、雑草が深く茂っている。人の姿はないが、交通止めはない。

「歳月が立てば、遺体は白骨化してくると思うけど、シェパードは臭気を嗅ぐことができるの」
 私は『茨城県警察嘱託警察犬』の彼に質問をむけた。
「骨になっても、多少なりとも肉片があるから、警察犬の臭気は可能です」
 遺族は遺体を待ち望んでいるし、一人でも多く探して、安眠させてあげたい。最近では、テトラポットから遺体が見つかったという。

「3.11発生した直後には、諸外国から救助隊が捜査犬を連れて入ってきたけれど、成果はどうだったのかな」
 私はそう質問を向けてみた。、
「あちらの犬は生存者を探す訓練を受けている。私のシェパードは遺体捜索が専門。犬の訓練方法が違うから。私の立場から、成果を云々できない」
 そう語る彼に、訓練方法はどう違うのか、と訊いてみた。
 警察の捜査にも絡むから機密事項だから、明かせないと話す。

 彼の経歴を聞くと、25年前の日航・御巣鷹尾根の墜落現場から、遺体捜索を行ってきたという。その後の水害や地震など、各地の自然災害で警察犬を使った捜索活動を展開してきている。

 捜索中はシェパードとの対話があったにしろ、被災地で独り黙々と一日じゅう行方不明者を探す。それはかなり孤独なものだろう。
 3.11から歳月がたった今も、なお地道に努力する姿勢には敬服したい。


                 撮影:いわき市豊間海岸・遠望は塩屋埼灯台、1月15日

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