A075-ランナー

『のり子大好き』が、フジTV「特ダネ!」のトップニュース

 9月9日は日本山岳会・101会のメンバーと山梨県・乾徳山に登った。北海道マラソンの開催日であり、3月に6回連載した、平沢直樹選手の活躍がつねに気になっていた。
 平沢選手はフルマラソンで19回の優勝者で、胸には「のり子大好き」のロゴマークをつけて走る。北海道マラソンでは、トップを走る女子の隣にいてTV生中継に(フジテレビがキー局)の画面に映る。それらが起因して、今年から日本陸連は団体名として不許可としたのだ。


 その決定に不満を持つ平沢選手から直接取材し、こちらからも日本陸連にも質問状を送った。納得が行く回答が得られなかったので、日本陸連に対する批判記事を書いた。
 タイトルは『テレビに映る「のり子大好き」はダメ? アマチュア排除の日本陸連』という6回シリーズだった。(穂高健一ワールド・PJアーカイブ・5月から入れます)

 他方で、平沢選手は日本陸連に登録しない「未登録」の部門にエントリーしたのだ。つまり一般参加として出場したのだ。それは胸に『のり子大好き』をつけて走る唯一の手段だったから。

 翌10日の朝8時のフジTV「特ダネ!」で、トップニュースでは北海道マラソンのキー局だから優勝者が取上げられた。
 ニュースキャスターの小倉智昭さんが、『ディレクターには触れないでくれ、と言われていました』と前置きして、最近は「のり子大好き」がネット(ライブドア・PJニュースを指す)で、騒がれているようです、と語りはじめたのだ。同時に、女子優勝者の加納由理選手(28)と併走する、平沢選手の胸が大写しとなった。

「のり子とは奥さんの名前です」。以前は『母さんもガンに克て』というロゴをつけて走っていたそうです。母親が亡くなってから、妻の名前に切り替えた。今年からはそのロゴが日本陸連から認められず、一般参加になったという経緯を説明したのだ。

 番組終了後、複数の視聴者に聞いてみた。小倉さんやコメンテーターは平沢選手には好意的な内容だったという感想をもつ。

 穂高健一が書いた『テレビに映る「のり子大好き」はダメ? アマチュア排除の日本陸連』の記事には、テレビ局と日本陸連の間に、なにかしら見えない圧力はなかったのか、という疑惑めいた記載がある。それだけに、PJニュースの批判記事を無視したかった、フジTVのディレクターの立場もわかる。

 平沢選手からは同日18時に、千歳空港から電話が入ってきた。「30キロ地点から、加納由理選手と併走し、ゴールまで一緒で、引っ張ってあげました」とレース展開を話す。
 女子選手はつねにオリンピック出場を視野に入れている、一分一秒でも好記録をとりたいのだ。
 欧米のビック・マラソンでは併走する男子ランナーがトップの女子を引っ張る。それは当たり前の話なのだ。海外レースの経験豊かな平沢直樹選手には、それが解っている。だから、トップランナーの記録を上げてあげる、という走りに徹しているのだ。同時に、平沢直樹さんの優しい心が出ていると思った。

 日本陸連は、いまだに「のり子大好き」のロゴを快く思っていない。「来年からは、一般参加はTVに映らないように、10分遅れのスタートではないでしょうか」と語っていた。

 平沢さんは電話のなかで、フジTV「特ダネ!」で、「のり子大好き」が取上げられていたことについて知っていた。「小倉さんは同じ獨協大学出身です。それを知っていたからだと思います」と推量していた。

 乾徳山登山で実況中継が見られなかったことから、一部視聴者から聞いた話だと、TVのカメラは何度か平沢選手の胸のロゴをアップで映していたという。解説者もロゴにそれにふれたようだ。

 フジテレビ系の関係者の間で、PJニュースの6回連載が大会前から話題になっていたと思われる。そうした背景がなければ、中継者に乗ったカメラマンがロゴをアップにしたり、解説者がそれにふれたり、翌朝に、「特ダネ!」のトップニュースなど取上げにくいはずだ。

 TV局はつねに視聴率アップを指向する。『のり子大好き』のロゴが北海道マラソンの大きな話題性になれば、TV局はむしろ「来年度の一般参加は同タイム・スタートで」と期待するだろう。
 これまでは排除の方向にあった平沢選手のロゴだが、風向きが変わるかもしれない。それに期待したい。

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