A075-ランナー

記録的な猛暑のなかで、14キロのジョギング

 8月17日は観測史上最高の気温で、多治見市(岐阜県)と熊谷市(埼玉県)でともに40.9度という記録的な猛暑となった。東京も最高気温36度だった。
 朝から過激な運動は控えるように、とマスコミは報じている。

 先日、東京マラソンに申し込みをしたばかり。他方で、いま現在の身体のコンディションは最悪で、両肩の関節が痛み、腕をふればすぐに痛みがくる。
 人間の心にはつねに怠け癖が宿る。『やらない理由。やれない理由』はすぐ見つけられるものだ。肩の関節が悪い、猛暑だと、練習をやらない言い訳はあった。それに打ち勝たなければ、フルマラソンの完走はおぼつかない、と自分自身に言い聞かせてから、ジョギング姿になった。

 自宅をでた朝9時には、すでに30度を超えていた。
 強烈な陽射しがつねに容赦なく降り注ぐ。葉桜などの陰がほしいところだが、日陰などは皆無だ。コンクリートの輻射熱で、体感では40度を超えている。いまや熱中症の話題が全国を駆け巡っている。それを警戒した走りに徹し、スピードを殺すことを考えた。

 中川に架かる奥戸橋と平和橋を一周すれば3.5キロ。一ヶ所の信号もない。3周で10.5キロ。6周でハーフマラソンと同じ距離の21キロだ。マラソン大会を意識したタイムトライアルとすれば、恵まれた環境にある。
 
 若いころから夏場には自信があり、
(真冬の寒風は大嫌い。猛暑の真夏のほうが耐えられる)
 と思い込んでいた。
 走りはじめた途端に、全身から汗は流れ放題だ。Tシャツや短パンは汗で絞れる濡れている。熱射病を避けるためにも、3.5キロ一周ごとに、身体を冷やす策を考えた。護岸道路から下ると、二階建ての民家の日陰に入った。

 用意してきた350mlのペットボトル(お茶とブドウ糖入り)を飲む。通常ならば、3周でボトル一本が丁度よいところ。
 しかし、途轍もない猛暑だから、第一回目の日陰休みで、ペットボトルを飲み干してしまった。

 二軒先で、花壇の手入れをする老人がいた。そちらに歩み寄り、散水用の水道水を分けてもらった。散水栓をひねる目の前には、朝顔が咲く。強い日差しとなると、ふつうは萎むはず。品種が違うのか、色鮮やかな花弁をひろげていた。
 
 ペットボトルを満タンにすると、ふたたび護岸道路に戻った。サツキの枝葉のなかにペットボトルを隠す。そして走りはじめた。
(無理して、熱中症で倒れたら、他に迷惑を及ぼす)
 そういう意識が先立つと、気力とか、精神力とかで突っ走る気にはなれない。結果として、4周の14キロで打ち切った。残されていたペットボトルの水を一気に飲み干す。心地よかった。

 自宅に向かう道筋に咲く、朝顔がこれまた鮮やかだった。

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