A075-ランナー

富士山を見ながら、快走

10月の青空。陽射しは強い、サングラスをかけた。すれ違った老人が、「富士山が見えるよ」と教えてくれた。「ありがとう」
 
このさき森永乳業の近くから、遠景の富士山が見えるはずだ。あと500メートルだ。冬場になると、雪峰の富士山の見える回数は多く、楽しめる。しかし、春から晩秋まではほとんど見えない。それでも大雨があがりで、風がそこそこ強く、東京上空のスモッグをすべて払ってくれる、という条件が備わると、富士山がみえることがある。

(両手の位置が低いぞ)
 ランニングの自分のフォームに意識が移った。気にしていないと、両手が下がってしまう。マラソン暦5年だが、身体がまだ覚えきっていないようだ。横目で川面をみると、さざ波。心地よい風が吹く。

「みえた」。富士の形は鮮明だが、まるでフイルムを透かしたような黒っぽい逆光で浮かぶ。山の表情はまったくわからない。ただ、山頂には三度笠を被る。山頂に強い風が吹くと、気流の関係でできる、めずらしい雲だと聞いたことがある。近景だと、いい被写体の富士山だろう。

富士山が街なかに消えた。ふたたび両手の振りに意識を変えた。

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