婚約者は刑事 ① 5回連載(004 世田谷・岡本)
更新日:2008年5月 1日
井伊佳元(いい よしもと)が豪邸の表札を見ていた。門柱の上には、春の陽ざしをあびる三毛猫が横たわる。こちらをバカにしたように、大きな欠伸(あくび)をした。
かれは腹立たしくなった。怒りはその猫ばかりでなく、布施(ふせ)和香奈(わかな)にもむけられていた。井伊はもう2時間も、彼女の住まいを探しつづけているのだ。
世田谷・岡本一丁目は豪邸がつづく、高級住宅地だった。まわりの庭木からは、多種の野鳥のさえずりが聞こえてくる。ひときわ閑静なところだ。
高級マンションのほとんどが、オートロック式の玄関で、一歩もなかに入れない。外部からだと、住人の名まえすらも確認できない。布施和香奈の住まいを探しあぐねる井伊は、だんだん腹立つ自分を知った。
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写真協力・モデル:写真協力・奈良美和さん(コーチ/コミュニケーションアドバイザー)
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