A070-TOKYO美人と、東京100ストーリー

新妻の悩み ③前編 連載(003 隅田川)

【 001 台場】
【002 浅草】からのつづき

 ジャンパー姿の井伊佳元は、店内の柱時計をみた。もう11時を回ってきた。かれはラフなスタイルで休日出勤し、早朝からバレンタインのディスプレーをしていた。
 きょうの午後2時には、真鍋(まなべ)美紀(みき)と逢う。『東京クルーズ』浅草発着場から出航する『隅田川ライン』の観光船に乗る、と約束事ができていた。

 かれはさっきから、妙な胸さわぎをおぼえるのだ。このモヤモヤはなんのか。またしても、遅刻し、観光船の出航時間に遅れてしまうのか。そんな予感なのか。
(あと30分以内、昼まえにはかならず店を出るぞ。どんなことがあっても、2時出航には遅れられない)
 井伊は自分に言い聞かせていた。

 かれの脳裏には、胸さわぎの原因のひとつとして、鬼頭統括部長の顔が浮かんだ。12月の店長会議は欠席した。鬼頭はそれについて一言もふれてこないのだ。もう1ヵ月半が経つ。これにはなにかある。裏がありそうだ、おかしいと、井伊はどこか心に引っかかるものがあった。

全文(003 隅田川)【前編】はこちらを左クリック。(印刷による読書がお勧め)


【後編】はこちら

発行・著作権:穂高健一。無断転載およびリンクは厳禁。

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