心は翼 連載⑥ 最終回 (015 飯田橋)
井伊佳元(いいよしもと)は小学生の文集をみていた。従業員が閲覧(えつらん)できるように、いつも休憩室におかれていた。
写真は生徒たちが寿司ロボットをのぞき込む姿を捉(とら)えていた。それは久能幸子教師が撮影したもので、子どもたちの嬉々(きき)とした表情だった。
井伊のPHSが鳴った。鴫野(しぎの)佐和子からで、いま成田空港に着いたという連絡だった。インドでは母親に会えたという。
「こんな親っているのでしょうか。21年まえのことはもう忘れなさい、と冷たく突き放されてしまいました。わたしのトラウマを理解してくれる態度など、一切ありませんでした」
佐和子の胸のなかには、淋(さび)しい風が吹いているようだ。
「明日にでも会って、くわしく聞きたい」
「いい加減さんに、話すことは何一つないんです。まるで木で鼻をくくったように、もうインドに来ないで、ヨガの修行(しゅぎょう)のじゃまよ、と追い払われました。父方の祖父母が、幼い私を奪(うば)い取って育てたから、もう母子じゃない、そんな態度でした」
全文はこちら左クリック。(印刷による読書がお勧め)
写真モデル 森川詩子さん
詩集『受容 』 小林陽子さん(詩人)
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