誰もがカメラマン時代。「写真エッセイ」の腕前チェックシートを作成
わが国が10年前に、ここまでデジタル文化が進む、と予測できた人はいるだろうか。
風光明媚な景勝地、四季折々の有名な観光地、親子連れのイベント、運動会、文化祭、どこに行っても、デジカメで写真を撮っている。あるいはスマホなどでも。それはだれもがもう見慣れた、違和感などみじんもない光景だ。
数十万円の高級一眼レフを買えば、撮影技術を知らなくても、腕前の良し悪しにかかわらず、「オート」にしておけば、素晴らしい写真が撮れる。カメラの超高度の頭脳が絞り、露出、スピードを組み合わせてくれる。全員が優秀なカメラマンになれる時代だ。
しかし、撮影後の処し方がわからず、ずさんになっている。ブログにしても、長続きしない。パソコンのプリンターで印刷すれば、高いコストになる。 被写体になった人に差し上げても喜ばれない。カメラ人生だと言い、バラ園で各種の花を合計数百枚撮っても、それらは発表する場がない
私はカルチャーセンターで「エッセイ教室」を持っている。一方で、ジャーナリスト活動から他人に見せる、伝える記事写真の撮り方はわかっている。この二つを組み合わせてみようと考えた。4年ほど前に、2か所のカルチャーセンターで『写真エッセイ教室』『フォト・エッセイ』講座を開いた。
NPO法人シニア大樂「卒業作品」
撮った写真を活用したい、文章も習いたい。「写真エッセイ」で人生の記録としたい。こうした希望者たちが少しずつ集まりはじめた。やがて、受講者も増えてきた。教室では添削を通して、受講者どうしの作品を知り得るし、私もがんばろう、という相乗効果も出てくる。
昨年からは、NPO法人シニア大樂でも、同講座を開いた。13人の受講者があつまった。月1回のペースで、「写真の撮り方」「文章の書き方」「冊子の作り方」の3つの技量をそれぞれ磨き、2か年に及んだ。いまや作品力を示す、「写真エッセイ」技術の指標表が必要だと考え、チェック・シートを作成してみた。
① 50点段階
一つの「題名」や「テーマ」ごとに冊子がつくれる技量が会得できた。ただ、作者の立場で作っている。それを配れば、大半が作者の独りよがりになってしまう。
② 60点段階
知合いとか、友人とか、取材協力者に、完成した冊子が差し上げられる。ほんとうに喜んでくれているか、義理の笑みか。そのあたりはしっかり観察する必要がある。この段階の人が名刺代わりで、赤の他人に差し上げると、パラパラめくる程度である。時には押し付け作品に思われがち。
③ 70点段階
冊子の随所には、気の利いた良い文章があり、写真も撮る角度や狙いが面白い。写真と文章のバランスが良い。
作者はみずから冊子が定期発行ができる、その技量と精神力(意気込み)が身についている。
④ 80点段階
作者は、読者の立場になり切って編集できる。作品の中で、最上の写真、最も良いエピソードがトップに持ってこれる技量がある。
読み手に対して、ちょっとした知識提供、特ダネ要素なども織り込まれている。
写真を見ても、読んでも楽しい。
④ 90点段階
読み手から見て、冊子はつねに驚きと好奇心を持たせてくれる。
「これはすごい」、「こんなこともあるんだ」、「人間って、こういうこともあるんだ」
最後まで、一気に読ませる能力を持っている。次回を楽しみにしてくれる読者(ファン)が付いている。
⑤ 完成度100
プロの編集者を通して、商業出版できる。あるいは、投稿しても、入選・受賞できるレベルに達している。
作品は独自に取材し、そこには意外性の情報が3つ以上ある。面白いアイデア、ユニークな考え方、知りたい情報などが総てのページにわたって入っている。