途中下車の旅、真夏の京都で散策=観光外国人が多し
中学の修学旅行は、奈良・京都だった。
「また、寺か」
バスのなかで、私はウンザリしていた。そのつぶやきが、側にいた教師に、聞こえたらしい。
「おまえは、車内に残っておれ」
夕方、旅館につくまで、ずっと車外には出られなかった。
京都に来るたびに、それを思い出す。
京都は、ことし(2016年)2月にきた。真冬だから、人出は少なかった。
広島に行く途中で、真夏の京都に立ち寄ってみた。
西洋人でも、女性はきものを着ると、3歩下がって歩くのかな。
声をかけると、気安く、笑みを浮かべて撮影に応じてくれた。
あまりにも、かしこまってしまい、写真としては歩く姿の方が良かった。
中学の修学旅行で行けなかった寺のひとつが、銀閣寺だった。
京都はよく立ち寄るが、これまで銀閣寺は意地でもこなかった。
約半世紀たった今、やっと心の解禁だった。
そうそう、龍安寺も、修学旅行で来なかったな。
祇園から八坂神社あたりは、このところ着物、和服姿の女性が多い
ことばを聞けば、7-8割が東洋人だ。
きものは人気なのか。
日傘にきもの姿は情感がある。
きっと日本人だろうな。
ふたりの雰囲気からして。
私は旅先の買い物(みやげ物)はまったくしない。
ちらっと横目でみるだけだ。
店の外で、戯れているのは、アジア系のひとたちだ。
存分に、楽しんでもらえばいい。
「旅は恥のかき捨てだ」
死語になったのかな、最近はきかない。
絵馬はさすがに日本語だ。
むかしホテルの聖書が一番盗まれなかったらしい。絵馬も盗まれないだろうな。
無人の絵馬売り場は、見向きもされていないようだ。
人気スポットは、坂の登りも、下りも、観光外国人だ。
騒々しさから逃げ出したくて、法然院にいってみた。
夏の花がしずかに咲いていた。
夏休みに入ったので、大学生たちの姿が散見できる。
青春って、いいな。
このところの歴史小説は「二十歳の炎」、「燃える山脈」と、10代の男女を書いてきた。
小説は主人公になりきって書く。だから、私の意識も、視線も、つねに同年代の若者に流れていく。
いまは江戸時代、27歳で老中首座(現・内閣総理大臣)になった阿部正弘の、小説を手がけている。
「正弘の正室・謹子(きんこ)は、どのように描くかな」
京の都を散策しながら、頭は江戸城下の武家屋敷にある。
最近はやたら多いのが、多国語の案内版だ。
京都の神社仏閣には、それが少ないのに気付いた。古風な伝統を守っているのかな。
入場券すら御札だ。
車屋さんは日本人だ。明治時代初期は、爆発的な人気だった。
祇園の伝統的な料亭で飲み食いした武士たちが、版籍奉還で失業し、車屋になった者が多かった。
金閣寺は久しぶりだった。
写真スポットで、大人気のようだ。
清水寺は真夏の昼間でも観光客が多かった。
夕方になれば、人がすくけれど……。
もういいや、切り上げるか。
「広島にいこう」
紅葉の秋は混むから、きっと来ないだろうな。
人物のいない写真でも、撮影しておくか。