抱腹絶倒で楽しめる、長唄「棒しばり」の高度な妙技(下)=帆之亟の会より
更新日:2015年3月31日
狂言の代表的な「棒しばり」は、歌舞伎や舞踊でも演じられる。とても愉快なをパロディである。
大名は菊月喜千壽が演じる
大名が外出するたびに、太郎冠者・次郎冠者の二人の召使いは酒蔵へ忍び込んで、盗み酒をする。
「なにか妙案はないか」
外出前に、大名はあれこれ思案する。
次郎冠者は帆之亟である。
城内の一角で、次郎冠者はが棒の手(護身術)を披露していた。
「拙者の腕は、藩内随一じゃろう」
得意になっている、棒の術を見せびらかせている。たしかに、その腕はずば抜けている。
大名は外出前に、太郎冠者と次郎冠者をよびつけて括(くく)りつけてしまう。
「これで、余の眼を盗んで、よもや酒は飲めまい」
「いかにして飲めるか」
創意工夫で、何としてでも飲みたい。
悪知恵がはたらく2人である。
甕(かめ)のなかの酒を器用に掬(すく)っている。
太郎冠者 千川貴楽
ふたりの協同で、甕の酒がたっぷり飲めた。
「よったぞ。酔った。心地良いものじゃ」
「盗み酒は旨いな。ここはひとつ踊ろうか」
棒にしばられた窮屈な姿で、器用に踊りまわる。
観劇する外国人にも、ことばはわからずとも楽しめる、人気の演目だ。
たとえ縛られていようが、酔った勢いで大名にもからむ。
もう、怖いものなしだ。
「おい。大名、もっと酒を持ってこい」
あとがどうなることやら。
【帆之亟の会】より 2015年3月5日(木) 日本橋劇場にて