A025-カメラマン

第10回さつき会は華やかな演舞で、心を魅了する=写真で舞う (下)

さつき会の舞台に立った踊り手は、26人である。それぞれに1年間にわたる指導されてきた尾上五月さんには敬服する。

 舞台は踊り手だけではない。大道具、照明、音響、衣装の着付け、メイク、後見、諸々の協力者の支えがあって成立する。

 スタッフの汗も、本来ならば撮影したいけれど……。

 清元「玉屋」の深町麻子さん。女優であり、日本舞踊を永年学んでいるという。

 踊り手のそれぞれ職業、人生観、生き方、経験など千差万別だろう。

 素顔(ふだんの顔)と、メイクされた顔とでは、まったく別人に思えたりする。

 深町さんは彫の深い顔だから、以前から、記憶のなかに留まっているひとりだ。


 清元『野路の月』 尾上れい さん


 野路には、旅の淡い叙情が感じられる。伴の相手(男性?)が見えずとも、なにかしら切なさが漂う。哀愁も感じられる。

 舞踊の姿が奥深い。身体を投げ出す、心の底が垣間見られる

 そんな表現になるほど、悲哀の踊りに思えてくる。


 長唄『大津絵藤娘』 尾上月乃 さん

 娘が黒の塗り笠に、藤づくしの衣装で、藤の花枝をかたげている。

 会場は、その華やかさで、どよめきが起きる。日本舞踊で、あでやかさは随一かも知れない。

 藤の花房が色彩豊かに、踊り手を引き立てている。


 長唄『助六』 尾上菊朝 さん


 助六が蛇の目傘を差して、粋に登場してくる。

 ここは江戸の下町。上野か、浅草か、深川か。

 雨降れば、傘の一つさして、踊りの一つもみせましょう。

 どこまでも粋だ。

 長唄『槍奴』 小林民人 さん

 かっこ好いね

 素敵だね。

 堂々としているね。

 観客席から賛美の声ばかり。

 きりっとした顔立ちが魅力だね。


 長唄『新曲浦島』  丸山すゞ さん


 踊り手の動きから、どうも浦島太郎ではなさそうだ。

 釣竿?をもって、海辺で踊る。

 激しくまわったり、ゆったりしたり、酔狂な釣り人か。

 そんな連想で、四肢の動きをレンズで狙う。



 長唄『巽八景』 尾上月香 さん


 深川の巽芸者なのだろう。じつに艶やかな姿である。

 遊里として全盛を極め頃、風流な江戸人が通いつめた場所だ。

 門前仲町の夜の雨なのか。ひたすら舞台に魅せられてしまう。
 
 シルエットの艶っぽさを採り込み、写真で表現してみた。



 韓国舞踊『関良舞』 李花子(ハンリャンム・ りはなこ) さん

 友情出演です。

 韓国舞踊は、激しく、ドラマチックに舞う。

 新体操のごとく。

 全身がスピード感あふれるなかで、踊り手の顔の表情を撮りたかった。

 帽子のつばが、その顔を隠す。

 結果として、動きの表現が少ない、静止の写真になり、激しさが消えてしまった。



 大和楽『松』 中村寿美江 さん

 
 松の緑豊かな、海岸かもしれない。

 しかし、盆栽の松に見たてた、踊り手のしっとり優雅な曲線を狙ってみた。

 撮る側のイメージは、きっと踊り手が表現とした内容と違うだろう。

 日舞は感じるままに、観ても、愉しめるもの。


 長唄「黒髪」 尾上はる さん

 文学でいえば、女性の表現で、黒髪は最も味が出てくる。

 夜の枕に入る前に、髪をほどく。

 行燈の明かりが、その姿を障子に映す。

 黒髪が淡く夢の空間に引き込んでくれる。

 

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