第10回さつき会は華やかな演舞で、心を魅了する=写真で舞う (中)
第10回さつき会だが、発足は13年前にさかのぼる。
「ごく簡単な『ゆかた会』でした。尾上菊礼さんの『あやの会』と合同の、ほんとうに手作りの舞台だったことを思い出します」と、尾上五月さんは語る。
「さつき会」として、毎夏に開催されてから、今回で10回目を迎えた。
長唄「外記猿」を舞う小池良さん。同会で、数少ない男性の踊り手の一人である。
踊り終えて、観客席に戻ると、続く舞台の一人ひとりを凝視していた。と同時に、手つきを見ると、微細に自演しているのだ。
熱心で、向上心の高い人なのだろう。
長唄「都鳥」を踊る山田春恵さん。
都鳥のストーリーは知り得ていないが、優雅な踊りだった。踊り手がシルエットが狙いやすい場所で舞ってくれていたので、思い通りの撮影ができた。
田中優子さんが、江戸時代の風流な商売を舞っていた。演目は、大和楽「うちわ売り」だった。
現在ではもはやあり得ない風物詩だ。そういえば、「金魚売」もいないな、と行商人の消え行く時代を感じさせられた。
「春の海」を舞う尾上禎さん。どんな海だろうな。春って。
淡い恋の海かな。春嵐の荒れ狂う海かな。それとも、長い冬から解き放された、春曙の海かな。
長唄「七福神」を舞う藤波大さん。
紋付きはかま姿で、武骨な男性を連想させられた。顏がきりっと引き締まった、武将の踊りにも思えた。
清元「玉兎」の尾上菊八さん。演出と踊りから、秋の十五夜だろう。餅つく姿の背後には、大きな月がのぼっていた。そこまで、写真に採り込めなかった。
無理すると、杵を持つ踊り手の表情が捉えられない。
ストーリ立てとしては、月のなかで、兎と臼で餅をつく。
大和楽「おせん」の尾上千月さん。夏の風物詩を彩る。縁台に腰を下ろす、まさに艶やかな浮世絵の美女である。
夕暮れの情緒たっぷり。
こんな色気のある美女・おせんならば、江戸の男はかなり言い寄ってきただろう。