A025-カメラマン

春の風物詩・潮干狩りは大人気=千葉・船橋海浜公園

 ゴールデンウィークの潮干狩りは、おおかた大混雑だろう。そう予測しながらも、あえて5月4日に都心から一番近い潮干狩り場で有名な、『ふなばし三番瀬海浜公園』に出かけてみた。
 東京駅からは京葉線で30分ていどで、二俣新町駅(市川市)に着く。駅前のバス停はやや遠いが、そこから京成バスで約12分だ。この間、両側には自家用車がずらり駐車していた。
 それだけでも、潮干狩り場の混雑ぶりが想像できた

 潮干狩り場(船橋市)は、砂地の面よりも、人間のほうが多く見えてしまう。

 予想はしてきたけれど、あまりにも人間が大勢すぎる。

 どこに視点を合わせて、写真を撮ったらよいのか、それすらわからないほどだ。

 まあ、1-3枚くらい撮っておくか。

 最近はピーチパラソルが殆どなくなり、大半がテントだった。世のなかは変わったね。


 海岸線はどこにあるのだろう。
 
 そこを確認すれば、砂浜は「潮干狩りの」群集だ。圧倒されてしまう。

 5月の海辺を楽しむ、そんな雰囲気をはるかに超している。

 背伸びをしても水打ち際はわからないが、ともかく海は見えた。

 手前にはピーチパラソルがあったので、大きく取り込んでみた。

 ここは砂地というよりも、粘土質の泥に近い。

 歩いても、硬い。

 まさか、東京湾を埋め立てた残土ではないだろうな。そんな疑問もわいた。

 親子連れが小さな空間で、手狭なスペースで、鍬を持ってかたい泥を掘りだす。

 やがて、親の方が夢中になっていく。
 

 「あっちがたくさん掘れるよ」

 「こっちだよ、ぜったいアサリが多いから」

 兄弟が言い争っていた。

 実際に、どこが多いのか、掘ってみないと判定ができない。

 兄弟っていいな。

 見渡すと、一人っ子がずいぶん多い。きょうだい喧嘩が好き勝手にできるほど、たくさん産んでほしいね、世のお母さんたち。 


 一人っ子の親は、手を添え、あれよこれよ、と掘り方を説明する。そのうえ写真を撮り、ビデオをまわす。

 ともかく、過保護のオンパレードの光景だった。


 つい最近も、深夜に震度5弱の地震がきた。東日本大震災3.11以来の大きさだと気象庁は発表した。
 もし、もうすこし震源地が浅ければ、揺れが強く、震度6は間違いなし。

 この昼間ならば、津波は20分以内に、この潮干狩りの場に押し寄せる。

 避難場所の看板をじっくり読むと、避難先の収容人数がわずか1250人だった。実に微細な文字で小さく、小さく人数が明記されていた。

 それも徒歩で15-20分の距離だ。

 大地震・大津波が来たら、この潮干狩り会場だけでも、3万人以上は死ぬだろうな。

 関東大震災って、いつ来てもおかしくない周期になっている。それには頬被(ほほかぶ)りして、

 「予期せぬ、想像を超える津波だった」と文字を小さく書いた当局は、そのように責任逃れするのだろうな。
 だって、行政がやることだもの。

 いまどき、ホテル・旅館だって避難経路の説明をするのに、迷子の呼び出しばかりで、こんなに大勢いて一度も防災に関する放送はなかった。

 そんなことすれば、潮干狩りに来る人が減る、収入の低下だと案じているのなら、危機管理不足だ。

 3.11の教訓はまったく生きていないな。

 「僕どのくらい採れたの」

 「見せてあげる」

 「ずいぶんとれたね。アサリの味噌汁かな」

 「さあ?」

 料理まで関与しないない顔だった。


 僕はアサリを採らずに、すねているのかな。こんなところで、砂遊びなんて。

 親から、なにか小言を食らったのかな。

  きみは間違いなく、一人っ子じゃないね。他の兄弟と、差をつけられたのだろうな。

 それにしても、四六時中、迷子の放送ばかりで、うるさいな。

 親が貝掘りに夢中になりすぎて、子どもから目が離れてしまうからだ。

 ふいに気づいて、あたふたするのだ。

 この少女は、やる気十分だ。

 まずは大胆で、豪快だ。

 採れるアサリはわずかだけれど。


  このおじさん、海でバッタ採りかな。

  網をあっちに、こっちに、獲物を追いかけまわす。

  稚魚をすくうなら、下からそっと持ち上げればよい。

  やはり、バッタだよな。


  よく見ると、その後ろでは、姐さんが転倒する寸前だった。

  ここらもカメラに収めたかったな。



 アサリだけでなく、蛤もとれる。

 大物だ、と喜ぶ少年。

 悦に入っていいんだよ、蛤なんて、そうとれるものじゃないし。

 頑張ったね。


 真上から、初夏の太陽が容赦なく照りつける。

 海からの潮風が吹いても、やはり暑そうだ。

 
 

 母娘が努力した割には、まだアサリが少ないね。

 帰りにお魚屋さんで、アサリを買わずに済むように、

 もう一度チャレンジしたほうがいいよ。



 バケツは300円、熊手は2種類で、200円と350円だ。

 元が取れるかな。

 いいんだ、潮干狩りが楽しめれば。

 そう言いながらも、掘りはじめると、むきになるのが人間の常だけれど。


 こちらは網で魚を狙う。

 だれもがアサリに集中するから、穴場かもしれない。

 でも、魚も利口だから、上手に逃げるだろう。


  ついに、本職が登場してきた。

  アサリを魚市場から各家庭へ送る。

 その強い使命感で、ドンドン掘りだす。

 あ然と見ている人もいる。 


 潮干狩りの人酔ってしまうと、

 遠くでゆっくり航行する貨物船が、妙に心に落ち着きを与えてくれる。

 おなじ貝掘りの光景ばかりで飽きてしまい、堤防の上で昼寝をしていたら、日焼けしてしまった。

 顔に帽子をかぶせていたけれど……。

 入場券だけではないよ。

 最後の関門。とったアサリは100g60円だよ。

 1kg600円と表示しないところが憎いね。

 たった、100gで帰る人など、見ているかぎり、一人もいなかった。

 入場料を入れると、1000円は超えるね。漁業権が高いんだよ。

 スーパーマーケットでアサリ1000円も買う人などいないものね。

 家に帰って、それに気づくのかな。

 むかしは海でみな自由に魚介類が採れた。いまは盗られたともいう。

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