宮島・大聖院(厳島神社の別当寺)は静寂な名刹なり=写真で散策
「広島に行くから、会おうか」
「どこで?」
「宮島でもしようか」
そんな身軽な感覚で、中学生時代の同級生・斉藤信義くんと待ち合わせをし、JR宮島口駅まえから、連絡船に乗った。
出航すれば、宮島の象徴の赤い鳥居はすぐに現れてくる。
五重塔があるが、見慣れているので、パスする。
荘厳な厳島神社も、入場料もかかるから、2人はどちらともなく、入ろうといわない。
赤い鳥居の写真スポットは無料だ。
親子連れや、家族連れが記念写真を撮っている。
潮が満ちていたので、鳥居の側に行けなかった。
幼いころは、宮島に来ると、「鹿」に追われて怖かったものだ。
いまは余裕をもって眺めていられる。
鹿が狙うのは何か。
鹿は紙(植物繊維)が好物だ。
野山に行くと、鹿は樹皮をかじっている。宮島の鹿の狙いは紙なのだ。
きっと女子学生が不用意に紙を持っているのだろう。
斉藤義信くんと、会うきっかけになったのは、拙著『海は憎まず】のアマゾン・カスタマビューだ。かれがそれに書き込んでくれていたから、御礼を兼ねて電話した。
ふたりは多島美で名高い大崎上島が同郷だ。美しい離島で、最近は「東京物語」のロケ地にもなっている。
宮島の風景には、ふたりはさほど共感やおどろきもない。むしろ互いの現況を語り合ったり、さらに芸州の幕末史などを語り合った。
広島人は毛利が大好きなのだ。江戸時代の藩主だった浅野はまず人気がないし、研究者も少ない。
「広島と言えば、毛利よのう」
斉藤くんも同様だった。
宮島の有名な山岳は、「弥山」である。
山頂から瀬戸内海の島々が見られる。
弥山の登山口にある、「大照院」は巨木や巨岩が重層をなす。
『安芸の宮島』が「秋の宮島」と捉えれるのは、この周辺のもみじがきれいだからだ。
韓国人がいまでも、大嫌いなのが豊臣秀吉だ。
秀吉が朝鮮出兵の総指揮者として、この宮島にやってきた。
この大照院で、「歌会」を催している。
ご本人は歌を詠み、片方で朝鮮侵略をおこなう。
強欲だけの戦争を仕掛け、優雅に過ごす。秀吉がいまなお韓国人に嫌われても当然だろう。
5月末ともなれば、直射日光が強い。
葦簀(よしず)張りの下、ベンチに腰を下ろした。初夏の潮風が妙に心地よい。
名刹だけに、寄付は多い。
「遍照窟」に入ってみた。カセットで読経が流されている。
僧侶たちの修行道場である。
壁面には四国八十八か所の本尊が安置されている。
この洞窟を一周すれば、四国一周のご利益があるのだろうか。
「読み」「書き」「そろばん」ここでは、手を合わせている人は見かけない。
時代の趨勢をくみ取り、「パソコンお地蔵さん」を作ると、きっと子どもたちは手を合わせるだろう。
この宮島には、墓や火葬場がない。
観光客は厳島神社にあふれるが、奥まった寺には静寂な散策ができる。むろん、法要も、墓参りの姿など1人もいない。こういう散策だけの寺もいいものだ。
秋になれば、紅葉が綺麗だろう。写真を撮りにきたい場所の一つである。
宮島から帰る。
潮風には故郷のにおいがある。