A025-カメラマン

宮島・大聖院(厳島神社の別当寺)は静寂な名刹なり=写真で散策

「広島に行くから、会おうか」
「どこで?」
「宮島でもしようか」
 そんな身軽な感覚で、中学生時代の同級生・斉藤信義くんと待ち合わせをし、JR宮島口駅まえから、連絡船に乗った。

 出航すれば、宮島の象徴の赤い鳥居はすぐに現れてくる。


 五重塔があるが、見慣れているので、パスする。

 荘厳な厳島神社も、入場料もかかるから、2人はどちらともなく、入ろうといわない。



 赤い鳥居の写真スポットは無料だ。

 親子連れや、家族連れが記念写真を撮っている。

 潮が満ちていたので、鳥居の側に行けなかった。

 幼いころは、宮島に来ると、「鹿」に追われて怖かったものだ。

 いまは余裕をもって眺めていられる。



 鹿が狙うのは何か。

 鹿は紙(植物繊維)が好物だ。

 野山に行くと、鹿は樹皮をかじっている。宮島の鹿の狙いは紙なのだ。

 きっと女子学生が不用意に紙を持っているのだろう。

 斉藤義信くんと、会うきっかけになったのは、拙著『海は憎まず】のアマゾン・カスタマビューだ。かれがそれに書き込んでくれていたから、御礼を兼ねて電話した。

 ふたりは多島美で名高い大崎上島が同郷だ。美しい離島で、最近は「東京物語」のロケ地にもなっている。

 宮島の風景には、ふたりはさほど共感やおどろきもない。むしろ互いの現況を語り合ったり、さらに芸州の幕末史などを語り合った。

 広島人は毛利が大好きなのだ。江戸時代の藩主だった浅野はまず人気がないし、研究者も少ない。

「広島と言えば、毛利よのう」
 斉藤くんも同様だった。

 宮島の有名な山岳は、「弥山」である。

 山頂から瀬戸内海の島々が見られる。

 弥山の登山口にある、「大照院」は巨木や巨岩が重層をなす。

 『安芸の宮島』が「秋の宮島」と捉えれるのは、この周辺のもみじがきれいだからだ。



 韓国人がいまでも、大嫌いなのが豊臣秀吉だ。

 秀吉が朝鮮出兵の総指揮者として、この宮島にやってきた。

 この大照院で、「歌会」を催している。

 ご本人は歌を詠み、片方で朝鮮侵略をおこなう。

 強欲だけの戦争を仕掛け、優雅に過ごす。秀吉がいまなお韓国人に嫌われても当然だろう。

 5月末ともなれば、直射日光が強い。

 葦簀(よしず)張りの下、ベンチに腰を下ろした。初夏の潮風が妙に心地よい。

 名刹だけに、寄付は多い。

 


 「遍照窟」に入ってみた。カセットで読経が流されている。

 僧侶たちの修行道場である。


 壁面には四国八十八か所の本尊が安置されている。

 この洞窟を一周すれば、四国一周のご利益があるのだろうか。

「読み」「書き」「そろばん」ここでは、手を合わせている人は見かけない。

 時代の趨勢をくみ取り、「パソコンお地蔵さん」を作ると、きっと子どもたちは手を合わせるだろう。


 この宮島には、墓や火葬場がない。

 観光客は厳島神社にあふれるが、奥まった寺には静寂な散策ができる。むろん、法要も、墓参りの姿など1人もいない。こういう散策だけの寺もいいものだ。

 秋になれば、紅葉が綺麗だろう。写真を撮りにきたい場所の一つである。

 宮島から帰る。

 潮風には故郷のにおいがある。

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