永く遺したい、日本美の建築・内装の魅力はここに=写真で観る
東京の台東区と文京区にまたがる、谷中・根津・千駄木(通称・谷根千)は、戦前、戦後の風情を残す。とはいっても、町並みは新しく変化し、変貌してきている。『東京の下町の歴史と情緒にふれる』という名のもとに、観光化されているのが実態だ。
あえて探さなければ、本ものの日本文化の風情や趣きは得ることはできにくい。外観からは古風な造りだなと探し当てても、建物に入って、内装までみることはできないのが常だろう。
文豪たちが住んでいたころの建物の、内装を撮影できる機会が得られた。
日本の建築美の最も輝く場所は、床の間である。
畳の間を飾る、「座敷飾り」だが、掛け軸や活けた花などを飾る。
客人が来れば、床の間を背にして座ってもらう。
こうした礼儀作法が、幼い頃から躾けられていた時代があったのだ。
座敷と座敷との間を通り抜けるには、家人ばかりでない。
表から裏へと風が通り抜ける。その先には、手入れの良い内庭の景色も見通せる。
茶室の小さな庭には、石灯籠と手水鉢がある。
茶事の前に、客人が手を水で洗い、心身を清めるところ。
和の趣きがたっぷり伝わる。
茶室から見る、庭には奥深い風情がある。
茶庭は左右と前後の配置にも、無駄がなく、眺めるほどに心静かな心になれた。
「奥座敷へどうぞ」
この廊下の空間が、日本人の心に適している。
洋間だとドアで仕切られた、隣りあわせ。
和室には部屋から部屋へと静かに歩みながら、精神の心構えと空間のゆとりが生まれる。
欄間と天井が竹細工である。渋い。しかし、妙に新しさもある。
竹は歳月がたつほど艶やかになる。
こうした竹のしなやかな味わいを取り入れた、日本の古来の伝統美が生かされている
和の庭園は四季の趣が濃縮されている。
何時みても、心が和むはず。
秋の紅葉がきれいでしょうね。
「雪景色もきれいですよ。東京に雪が降るときは、いらしてみてください」
そう教えてくれた。
お茶の道具が並ぶ。これら道具が語りかけてくる。
茶の心得がなくても、妙に心が落ち着く。
京風の趣が生かされた玄関の内である。
客人を迎える。家人を迎える。
生け花は目立たず、出しゃばらず、なにかしら静かに語りかけてくる。
欄間の彫刻は、透かし彫りである。
どちらの部屋からでも、心ゆくまで眺められる。
「隣の声が聞こえる」
こんな個人主義など無縁だった。
隣り部屋と欄間を通した、心のつながりがあった。それが日本文化である。
障子をあける。畳の上の歩き方すらも、礼儀正しくなる。
と同時に、言葉づかいもていねいになる。それが和室の魅力だろう。
二階の窓から、庇を見る。
ここにも大工の棟梁が腕を振るった、見事な造りがある。
大工にしても、庭師にしても、きっと無名の人だろう。
名は残さずしても、腕の良い仕事を遺してくれている。
「ちょっと、肩が凝ったかな」
さあ、近くの和風の店(根津)に行って、会席膳でも食べよう。
この店は、プラス飲み放題で、5000円だった。
ちょっと割高かな。観光化した谷根千だから、仕方ないか。