A025-カメラマン

名古屋を観る、城址、球場、德川園の写真散策


 名古屋市役所前のバス停から、城址に向かうと噴水があった。
 雨の中でも、勢いよい吹き上げていた。

 じっと見つめていると、城址の入口なら、この先ですよ、と教えてくれた男性がいた。

 城址には梅が咲き始めていた。

 香り豊かな紅梅で、思わず息とともに、体内に匂いを吸い込んだ。

 

 尾張名古屋は城で持つ。そう呼ばれるほど、德川御三家の尾張藩には威厳があった。

この尾張から、德川15代将軍は一人も出なかった。


 ガイドブックを見て、名古屋球場に近い、地下鉄駅に降りてみた。
 もう駅名は忘れた。

 「名古屋マラソン」が次なる日曜日だった。
 ゴール地点のはずだが、その割にはすっきりしていた。

 東京マラソンの街の告知のような華やかさは感じられなかった。

 観光のイラスト地図を見ながら、德川園に向かう。

 地元の人に路を聞いても、首を傾げられた。

 つまり、このルートはメインでなかった。でも、頭上の通路がとても長くて気に入った。



 德川園に入った。豪華な展示品のオンパレードだ。

 德川家がいかに黄金文化を支える、金山を持っていたか、同園を訪ねれば、よくわかる。

 德川家の庭園だけに、山水の風情は一級品だ。

 大名庭園は川もあれば、池もある。庶民の生活にはほど遠い

 街なかで、木橋は見かけなくなった。

 太鼓橋などはもう庭園にしかないのだろうか。


 大名庭園はどこに行っても、新郎新婦の撮影現場は目にするものだ。

 文金島田、紋付き袴。それは日本古来のもの。庶民でなく、上流階級のものだった。



 錦鯉が数多く悠然と泳いでいた。池舟が係留していた。

 管弦の趣の催しなどもあるのだろうか。



 来園者たちは庭園内を回遊する。

 大都会のなかの、この静寂さがゆるやかな時間を提供してくれている。

 貴重な余裕空間だ。

 この庭園の造りや技法はわからない。

 むろん、調べればわかる話だが、そんな理屈は必要ない。

 静かな情景を楽しむだけだ。

 この情感は心休まるな、と立ち止まって、じっと眺める。

 光景のなかにはいくつかのアクセントがある。音のない音楽さえもかんじる。


 苔の古木は大好きだ。
 じっと見つめていると、苔むす樹皮からも歳月の流れが読み取れる。

 樹齢など知る由もないが、
 德川家を見つめてきた、長い時間が樹木とともに共有できるから、尊い

 庭園の出入り口に近づくと、新たな訪問者とごく自然に入れ替わる。

 各々がそれぞれの感性で、楽しむのだ、庭園空間を。


 大名屋敷の築地に沿って、町に向かう。

 この先に喧騒とした、大都会があるとは思えない。


 江戸時代の通貨を見てみたい。念願だった、かつての東海銀行の博物館に立ち寄ってみた。

 大判、小判、千両箱など見応えがあった。

 素晴らしい錦絵も展示されている。

 名古屋駅前にきたが、繁華街は別の場所だった。

 東京駅と有楽町・銀座のようなものか、と勝手に納得した。

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