地球環境保全と言うは易く、行うは難し《雨水タンク》=須藤裕子
《ま え が き》
雨。
多すぎれば洪水に、少なすぎれば干ばつになる。
「雨も溜めれば資源!」として作られたのが「雨水タンク」だ。そもそも雨が降った時、どのくらい溜まるものだろうか。
福岡県庁のHPによると、貯水量は、屋根などの雨を集める集水面と降水量によって決まり、
貯水量(L)=集水面積(m2) × 降雨量(mm) × 0.9(集水可能な割合)
ちょっとした雨が1~2時間降れば、家庭用の200L程度の雨水タンクなら満水で、これには驚く。水循環から「雨水タンク」に関心が湧いた。
見えたもの、見てこなかったものに気づく。
葛飾区役所の正面玄関を飾る「パンジー」。奥の黒い箪笥用の物体は、200ℓの雨水を溜め、自動潅水装置として利用する「雨水タンク:雨びつ」だ。
サンエービルドシステム(株)の商品で、飯を入れるおひつを模して、米も水も大切にする気持ちを込めている。
「葛飾区シニア支援センター」にも設置されている。蓋はさび付いているが、蛇口はピカピカだ。ここでは「掃除」や「洗車」、「植物への水やり」など日常業務の中で使っている。近所の人も利用している。
「ミニダム」を推進利用するために、施設内で引き継ぎを徹底し、申し送りされてきている。
立石6丁目にある株式会社「後関(ごせき)製作所」の敷地内には、災害時に活用するための井戸を掘ってある。そのうえ、同敷地内に建設したマンションには、自販機を設置し、電気止まった時は、自動的に風力発電からの電気に切り替え、災害時に、提供できるようにしてある。
同じ立石6丁目に、長屋風の木造住宅が並んだ、昭和にタイムスリップしたような一区画がある。
通路には、古くなって劣化しかけたポリバケツが置かれている。ここは、マッチ1本で火が燃え広がりそうなところだ。それを自覚したかのような「防火用水」がある。
「雨水タンク:ミニダム」が持つ頑丈さ、大きさ、便利さ、美的なセンスはないが、住民の精一杯の防災意識を見た。
住宅地の一角に、飛び出したような、元気な魚の彫刻がある。よく見ると、口元などはあまり緻密ではない。
いったい何だろう。
これは、「青戸地区センター」の入口に置かれている彫刻だ。2階の図書館で、若い職員に尋ねてみると「知らない」と言う。
しかし、年配の女性職員が「雨水」を溜めているのだと教えてくれた。
尻尾の蛇口をひねると、水が勢い(・・)よく出てきた。
平成27年4月から新校舎になった葛飾区立中青戸小学校。219㎥もの貯留雨水を、トイレの水洗や散水に使う。
その他、屋上の植物に自動潅水システムで散水している。
青戸第2団地の中庭にも、雨水を貯留して使う設備がある。しかしながら、ハンドルを回しても水は出ない。
「数年前までは、水が出て子どもたちがよく遊んでいた。飲み水ではないため、飲めないよう石を高くして工夫もしてあるが、壊れてここ何年も出ていないし、修理もしていない」
と、自治会長をしている福田雅さんが話されていた。
木製で体裁のいい「雨びつ」2台の奥には、もう一つ、200ℓの「雨水タンク:ミニダム(商品名)」もセットされていた。
雨水資源を有効利用する製品が、区役所のプランタや花壇を潤している。