わがまち かつしか2016「 時の流れが見える」(中)=郡山利行
「30分から60分計が、私の所で作ることができる、最も大きな砂時計です」
金子硝子工芸社の社長の金子實さん(69)は、原材料のガラス管と、加工が終った<ひょうたん>を手に取って見せてくれた。
2-3 砂入れ
砂入れ作業前の、準備作業は、水洗い、乾燥、ふるい分けが基本であり、とても入念な作業である。
砂の種類によっては、時計に使えるように調整するのに、苦戦することもある。
次は、円筒形・ひょうたん型のガラスに、所定時間分の砂を入れる作業である。
砂を多めに入れて、規定時間で落下させ、残った砂を出すことを、何回か繰り返すことで、正確な砂時計にする。
「砂鉄の時計では、3分計なら3秒、5分計なら5秒までの誤差に納めるような精度を確保しています」
と、金子社長は力強く語った。
2-4 枠取付け
砂入れが終ったガラスの本体を、 保護する目的もある木枠(金属枠もある)は、別会社が作った製品である。
砂の準備作業にかかる時間と作業を別にすると、ガラスパイプの切断から枠の取付けで完成である。
砂時計作りは、金子さんの工場では、1日に50~60個である。
『PCインターネットでの問合せや、注文のメッセージを確認する、金子社長』
3.思い出の製品とこれからの製品
金子社長が、1965(昭和40)年、高校卒業と同時に、父の工場に就職した頃、この3分間の砂時計は、エッグタイマーという商品名で、米国向けの輸出品だった。
最盛期には月に約3万個を、4ヶ所の工場で製造した。
1971(昭和46)年のドルショック以降、輸出向け製品の需要が無くなり、砂時計専業では経営が成り立たなくなった。
先代社長のガラス加工技術で、ガラスの風鈴(白鳥型・金魚型・花瓶型)や理化学関連の容器などを作って、しのいだ。 どん底の時に、金子社長は、父から本格的にガラス加工技術を学んだ。
そして平成元年頃から、砂時計だけでようやく、安定した工場経営が保てるようになった。
エッグタイマーは、金子社長50年間の原点のような製品である。
個人の持ち込みには、甲子園球場の砂があった。
写真の左側は、甲子園球場が、あるイベントでの記念品として注文した製品であり、その隣は、選手として出場した人が、持ち帰った砂の時計である。
木枠は3本のバットになっており、天板にはボールの縫い目が彫ってある。
写真の時計は、ニューヨーク、ヤンキースタジアムの砂である。