『せっぺとべ』400年続くお田植え祭り(中)=郡山利行
鹿児島県日置市日吉町 八幡神社の400年つづくお田植え祭りは、ことし(2014)年6月1日(日)の行われた。
お祭りは一段と盛り上がってきた。
神田への御下り。
神社での祭礼が終ると、直ちに神田へ、決められた順番で向かった。
全ての団旗竿としべ竿が立ち並び、その下で、ほぼ全員のせっぺとべ衆が、円陣を組み、歌いながら、飛んで跳ねた。
田植えがしやすいように、田んぼの土をこねらす意味と、田んぼの中の害虫を踏みつぶす意味があり、泥にまみれて今年一年の豊作を祈願する。
精一杯の元気で、「せっぺとべ」踊りをすると言い伝えられている。
この瞬間が、お田植え祭りでの、参加している者と見る者がそれぞれに、気持ちの高ぶりが最高潮に達した時だった。
神社境内に作られた臨時の神田では、若い父親が仲間たちに見守られて、念願の長男(10ヶ月才)の両足を、どぼりと付けた。
若い衆が、ぬる湯割りの焼酎を飲み、田の中で円陣を組み、唄を歌いながら勢いよく飛び跳ねる。
竿が倒れそうになった時、それを防ぐ多くの仲間たちの動きが、泥田んぼの中でとても珍しく、観客から喝采を浴びていた。
先端のしべは、絶対に田んぼに付けてはならないので、集団の名誉にかけて、せっぺとべ衆は必死である。
そして、この儀式が無事に終った瞬間に、彼らは田んぼの中で、弾かれたように飛んで跳ねる。 せっぺとべ!
神田で、身体全体が真っ黒になった一人が、小さな女の子に泥をなすり付けようとしたら、少女は火がついたように泣き叫んで、お母さんにしがみついた。
泥がつくと、一年が無病息災で過ごされるという、おまじないである。
お母さんは子供の泣き叫びをかばい、写真右端のお父さんは苦笑い。
八幡橋のたもとで、神社に向かって鎌踊りを奉納した集団である。
子どもの欠員場所で踊っていたせっぺとべ衆の男性は、相手方の少年を、優しくリードしていた。
膝までつかるような田んぼの泥の中、激しい身体の動きは、いくら若い衆でも、焼酎をたらふく飲んだ者には、つらいことだろう。
へたり込む者、寝そべってしまう者がいた。 【つづく】