色被せ(いろきせ)ガラス = 吉沢 希明
吉沢 希明さん=長野県出身、シニア大樂「写真エッセイ教室」の受講生
かつしかPPクラブ会員
色被せ(いろきせ)ガラス 吉沢 希明
ある新聞記事に目が止まった。
記事の地名が江戸川区平井とあり、私の住む所と同じ、江戸川区名産品の紹介で、色被せガラスで作成した「ぐいのみ」が人気だという紹介記事だった。
さっそく場所や連絡先を確認し、見学と取材の申し込みを行う。社長の中村弘子(69)さんから、快諾を頂き、話を聞くことができた。
「 色被せガラスの特徴はなんですか?」
ガラスの上に、色の違うもう一枚のガラスを重ねて模様を付け、ガラス容器等の製品にするものです。被せるガラスの厚さは0.2から0.3ミリで、紙の厚さくらいです。これが特殊技術で、熟練した作業員が、手作業で作るために大量生産はできません。
一人は吹く担当の方、もうひとりが色をつける担当と二人の息を合わせることが肝心です。当社の特徴ですが発色の良さで高い評価を頂いています。
赤色を出すのが一番難しいのです。
私の父、金蔵が色被せの技術を開発したものです。この特殊技術が使えるのは日本で2社しかありません。
類似の工法で製造しているところもあるようですが、職人気質の父は特許には関心がなく、「よければ皆で使えばいいや」という、おおらかな気持ちの人でした。
社名も父の名前の文字を一字もらいまして「中金硝子」と命名させてもらいました。
「御社は創業何年になりますか?」
法人にしてから62年ですが、創業は私(社長)の祖父の時代ですから200年近くになろうかと思います。
「御社の後継者は決まっていますか?」
はい。息子が工場部門を担当しておりまして、伝統の技術を会得して、次の世代の若い人を育てています。小学生の孫が「ぼくも、この仕事をやるんだ」と言っているそうです。
若い心強い後継者が決まっているのは頼もしい限りだ、と思う。
「最近のヒット商品はなんですか?」
江戸川の花火が、「どーん」と上がるのをイメージした作品を考えてみました。ところが、これは花火が開いた時の表現が難しくて、上手く出来ませんでした。
この体験を活かして、「逆さ富士」のぐいのみ(トップの写真)を作成しました。富士山の世界文化遺産に登録されたこともあって、人気となり製造が追いつかない程に、なっています。
円安になり、燃料の経費がアップしています。厳しい経営環境にありますが、出来るならばこの事業を、続けていきたい、と力強い言葉で締めくくった。
中村社長の取材を通して、伝統工芸を守っていこうとする、熱い想いに感動した。今回取材を通して、このような地元の事柄や、江戸切子・ガラス製品の深みのある綺麗さを知る機会になった。今後とも、わが家の近く、江戸川の周辺でも、このような企業があっただろう、と目配せしていきたい。
【撮影:吉沢希明、25年7月9日、江戸川】
関連情報
中金硝子株式会社 :江戸川区平井2-11-29