第23回 『元気100エッセイ教室』作品紹介
エッセイの基本は『人間』を書くことである。中核に座るのが、人間の心を描くことである。
人間の心の動きや異性への想いなどは、ことばでは明確に言い切れないものが多い。
「なぜ、そんなことをするのか」
ことばでは言い表せず、根拠すら曖昧なものが多い。悶々とした感情、得体の知れない苦しさ、気まずい気持ち、もどかしい苛立ち、これら心の動きをいかに読者に伝えられるか。
それには心理描写の書き方を学ぶことである。心理描写の書き方が上手くなればなるほど、良いエッセイが書ける。
ビジネス文に慣れてきた人、記事を書きなれた人は、曖昧な表現を用いず、排除する習慣が身についている。散文のエッセイは、その逆である。曖昧な心をいかに曖昧なまま表現して伝えられるか。それよって真価を問われる。
【心理描写の書き方のコツ】
① 副詞を多めに使う。
「妙な」「なんとなく」「得体の知れない」「悶々とした」など
② 副詞の後には必ず、「なぜ、そう思うのか」「なぜ、そう感じるのか」という説明を添えること。そうすれば、散文の作品には深みが出る。
③ 疑問形を作中に入れる。疑問形で、自問してみる。読者に問いかけてみる。
この3点を中心に、例文をあげて説明した。
今月の作品には、ユニークで面白いものや、「警察犬になれない」「くそばばあ」という奇異なタイトル、歳時記、展覧会の批評など、小さな体験のなかに世相を斬るものなどと、バラエティーだ。
私自身は動物が好きではない。むしろ嫌いだが、講師の立場上、連載ものの動物歳時記を読む。いつしか動物愛に感心させられつつ、こちらまでも犬猫の名まえすらおぼえてしまった。
こうした作品を一作ずつ、紹介して生きたい。