推理作家の新津きよみさん、葛飾・立石を歩く
新津きよみさんは売れっ子の推理作家だ。彼女の作品の多くがTVドラマの原作になっている。現在執筆中の推理作品のなかで、指名手配犯にかかわる女性の住まいを東京・下町にしたいという着想があった。
それを聞いたので、葛飾・立石を勧めた。レトロな町で人気があるし、夜の街は若いカップルも多く、『昭和の町』といわれている。これまで、日本ペンクラブの方々を立石に案内すれば、皆さんはずいぶん気に入っていますよ、とつけ加えた。
新津さんとの話し合いで、6月14日(火)の午後3時から、立石取材の同行を決めた。と同時に、夕方5時からは新津さんのファンとのミニ懇親会をセッティングした。
待ち合わせ時間に京成立石駅に出むくと、彼女は早めに来て、すでに駅周辺の繁華街を歩いていた。それならば、町なかの案内はカットし、一級河川の中川に架かる本奥戸橋に出むいた。途中で、手焼き煎餅屋に立ち寄った。
本奥戸橋は古い鉄骨構造だ。近代的な橋にはほど遠い。ところが都内とは思えないほど、この地点は七曲りの蛇行で風光明媚だし、東京スカイツリーが近くに見える。下町の新名所である。そんな説明をした。
「TVロケも使えるわね」
新津さんは、すでにテレビ化を視野に入れていた。
駅近くに戻り「葛飾区伝統産業館」にむかった。火曜日は休みだった。下町職人の技と工芸品の展示があり、交代制でつめる職人がみずから工芸の手法から製品化まで説明してくれる。新津さんには絶好の素材だと思ったが、残念だった。
作中の「指名手配犯にかかわる女性」の住まいはどこにするか。彼女は思案していた。