第99回 元気に100エッセイ教室=ビジネス・エッセイ
エッセイを随筆の延長線上で書くのが一般的です。作者の記録的要素で後世に体験を残していくことも、重要な役目だといえます。
企業戦士として活躍した時代がある。その一面を抽出し、そこに喜怒哀楽の情感を交え、読ませる作品に仕立てていく。この場合は当然ながら、ビジネス用語が必然となってきます。
随筆の場合はむしろ曖昧で複雑な感情を狙うものです。しかし、ビジネスの展開となると、曖昧な用語は避けて、できるだけ的確な語彙の使い方が求められます。
「戦略と戦術の違いはなにか」
作戦の大小ではありません。戦略とは敵の作戦を先読みしていく計画です。戦術とは戦う技術の選択です。
ここらをしっかり押さえておく必要があります。
「危機と危険はちがう」
危機とはシステムが思うように動かなくなって起きる混乱です。危険とは予測・予知ができず、わが身にふりかかってくるものです。
「権力と権威はちがう」
権力とは奪うもので、その座で威張っているひとたちです。権威とは自らの手でつくりあげ、相手が敬うものです。
「公平と平等のちがいは?」
公平はそれぞれの価値を正しく評価することです。平等は横一列に並べることです。
「マイホームとマイハウスはちがう」
新築の家を買ったが、支払い困難で夫婦げんかが絶えない。マイハウスは買ったが、マイホームはできなかった。こんなふうな認識が必要です。
「同情と思いやりのちがい」
同情とは可哀そうだと、上から目線の優越感です。思いやりとは相手の立場で考える行為です。
「利口な人と、賢い人はちがう」
利巧とは要領がよく、立ち回りが上手で処世術にたけているひとです。賢い人は学歴、年齢、男女、地位に関係なく、人の道をわきまえた判断と行動ができるひとです。
※ 企業エッセイの場合は、人間の観察の目をしっかりもてば、素材は豊富です。
できもしない非現実的な対策や戦略をぶち上げて
「だから、わが社は問題なんだ」
という目立ちたがり屋も多いでしょう。居酒屋をのぞけば、もう右も左も、そんな連中かも知れません。
陰で、能力がある人を誹謗する。そんな陰湿な社員もきっと記憶にあるでしょう。
精神的に傷つくのを恐れて上司にはへつらい、下に威張る。チヤホヤされる相手を優遇する自己愛(ナルシズム)社員は結構いるはずです。
こうした企業内(公務員も含む)の人間模様を書いてみると良いでしょう……。
【補足】
小林剛「経営センスを磨く本」「ザ・リーダー」から、引用しています。
小林氏は、私が30代のころ、ビジネス用語の使い分けが大切だと言い、ながく厳しく指導してくださった恩師の一人です。