A020-小説家

第14回歴史文学散策(下)=小石川は江戸時代の史跡の宝庫だった

 

 3月20日の歴史散策はソメイヨシノがまだ咲かず、東大・小石川植物園のわずかな桜花にも感動していた。


「この石碑はストレート過ぎて、どぎついわね」
「東大の理系らしいわよね」
 こんな会話が飛び交った。


 種子植物にも精子が存在する。 それは世界的な発見だった。 昭和31(1956)年に60周年の記念碑が建立された。樹齢は約300歳と推定されている。



 小石川植物園で、歴史作家の山名さんが、丸い鉄製のマンホールを指した。なにかしら? ミステリー作家の新津さんが写真に撮る。これも作品の創作に役立つかも。犯人が逃げ込むとか……。

 マンホールには「帝大」と明記されていた。となると、戦前からの仕様だ。
 相澤さん(PEN広報委員長)もおもむろに撮影に加わった。


 次なる史跡は、慈照院だ。初代の辰巳屋惣兵衛(たつみや そうべえ)、通称・平井辰五郎が眠る。

 江戸の町人だった辰五郎は、踊りが大好き人間だった。祭礼となると、かれは女装して面白おかしくおどった。
 その名が売れると、大名邸の宴会の余興にも招かれた。自分の遊戯のためだといい、金は受け取らなかったという。

 天明8年には、仮面をつけて巫女(みこ)のまねをする狂言神楽を考案した人物である
 

 慈照院での、新津さんの願いごとは何かな。

 遊侠とは関係なさそうだけど。



 慈眼院(じげんいん)の沢蔵司稲荷は御存じ? 良く知らないな。

 歴史作家の山名さんは丹念に見ていた。



 伝通院には千姫、家康の生母・於大などが眠る。院内でも、特別に目立つ巨大な墓だった。

「墓の大きさは死んだ人の力よりも、当時生きていた者(喪主の)力量を示すものだ」

 井出さん(PEN事務局次長)が語っていた。

 


 文芸評論家の清原さんが、瀬戸内テレビの文学番組で、この寺に眠る柴田錬三郎の墓に録画撮りできたことがある、と懐かしがっていた。

 清川八郎・佐藤春夫など、歴史上の人物がずらりならぶ。

 だれもが作家だから、案内図からごく自然に、著名な文学者の墓に足がむけられていた。

 
 礫川公園で春日局像をみてから、相澤さんが直前に予約を入れてくれた後楽園(地下鉄・丸の内線)に近い「ワインバー」に入った。

 夕刻5時だから、開店一番のお客だ。見てきた史跡から、いきなり歴史や文学を語りはじめる。

 若い女性などがしだいに店内に入ってくる。若者と我われの違いが如実にあった。それはグラスワインで頼むか、香りでボトルを頼むか、オーダーの違いでもあった。

 次回は6月ごろかな。

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