A020-小説家

第69回・元気に100エッセイ教室=上手い文章は音読で決まる

『良い文章は密度が高い』
 それは詰め過ぎとはまったく違います。むしろ、正反対です。最も良い文章とは、簡素で、平明で、的確です。それには「省略、圧縮、刈り込み」とで成されていくものです。

 推敲の段階で、作者がセンテンスごとに目を光らせ、無駄な文字の刈り込みが行えば、読み手にも負担が少ない文章になります。良いリズムで読み続けられる作品にもなります。

 どうすればよいか。技法としては「庭園の庭師」を真似るとよいのです。

 庭師はまず庭全体を眺めてから、一本ずつ樹の大枝を鋸で切り、形を整え、次は小さな枝葉までも、鋏でていねいに刈り取ります。その上で、最後は松葉一本でも、不ぞろいを見逃さず、指先でミリ単位で摘み取ります。すると、どの樹も形の良い庭木となり、庭全体のなかで調和がとれているのです。

文章の庭師
 この手法で臨むとよいのです。書き上げた作品は、全体の構成から、冗漫な文章はまず剪定するのです。そして、次は圧縮と省略を行う。さらには無駄な一文字でも見逃さず、刈り込む。
 こうすれば、一つひとつの文章には味が出て、全体のなかで、どれもが必要不可欠な用語となります。

『省略、圧縮、刈り込み』
 そのの最大のコツは音読です。
 作品の推敲は、ただ目で追う黙読だけだと、作者の思い込みで、キズや不自然な文章までも見逃してしまいます。

 大きな声で読み上げれば、途中で、かならず「どこか変だな」と思うところがあります。声が突っ掛れば、そこが文章の流れが悪いところです。
 文と文のつながりが悪かったり、おなじ用語がくり返されたり、語尾が不安定だったり、ときには登場人物の名前ミスすらも発見できます。それらをこまめに直していくと、文章が磨かれていきます。

 音読をしなければ、文章は上級にはなれないと言い切っても、過言ではありません

『良い文章にするには、推敲の「音読」で成される』


 作品は数日間、寝かせておいて、改めて音読するべきです。すると、より客観的な立場で、文章の良しあしが判別できます。 文章の前後を入れ替えたり、文章の荒さを改善したり、密度の高い文章(上級)にまで磨かれていきます。
 そこから、さらに数日後に、みたび大声で朗読する。この大声が重要なコツです。これが身につけば、うまい文章が書ける礎になります。

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