A020-小説家

純文学が庶民にもどる=小説3・11『海は憎まず』皆さんの感想から(上)

 これまで芥川賞などの悪影響で、純文学は読んでも訳のわからないもの。難解で、文字が読めても内容がわからず、とても読む気がしないと言い、一般庶民は純文学からはそっぽを向いてきました。

小説3・11『海は憎まず』は、私小説・純文学です。「小説は人間を書くことだ」と、まず述べています。庶民の目として、この先を読んで、むずかしい文学だと感じるでしょうか。どうでしょうか。

 『海は憎まず』を手に取ると、読者は作者とおなじ目線で、主人公「私」といっしょに被災地を回われます。
 TV、映画、報道ではまず味わえない、被災者たちの心理や本音が次つぎ聞くことができます。メディアが伝えきれていない、あるいは伏せてきた被災地の人々の生き方、考え方、ものの見方にも接しられます。

「えっ、こんなことがあったのだ」と読者と主人公が一緒になって、驚くことができる。「人間って、そうだよな」と、作家とおなじように感じられる。
 それらが13章にわたる人間ドラマとして、克明に、わかりやすく、書かれている。読み手は次つぎに現地の人たちに感情移入ができる。だから、読み応えのある作品ですね、という評価が寄せられているのだろう。

 プロ作家からは書出しからして良いね、とか、一般のオバサンたちもラストまで思わず一気に読みました、と言ってくれます。
 芸術ぶって気取り過ぎだった「純文学」が、いまここに一般庶民の手にもどってきた。「海は憎まず」で、純文学・小説が庶民の手に取りもどせた。それは大げさでしょうか。

 寄せられた、メールやはがきなど、一部を任意に紹介してみます。

① 【熊谷さん・気仙大島で取材した、ご高齢の女性】

 「海は憎まず」はすべてを忘れて、一気に拝読させていただきました。
 初版本を寄贈いただきまましたことを深謝します。素晴らしい内容です。大島はご存じのようにまだ本屋がございません。郵便振替を添えて、私の住所に10冊お送りくださいますようにお願いいたします。
 気仙沼ちゃんの民宿でお会いできてたから、まもなく一年です。ご自愛ください。
 ご同行の名カメラマン・青山彩さんにも、よろしく。


② 【高橋さん・元大手出版社・編集局長】

 満を持しての取材。それをノンフィクションでなく、小説に昇華させたことに敬服しています。まだ、読み始めたところですが、なかなかいいですね。読み終えるのが楽しみです。
 

③ 【見入りさん・表紙装画】

 人々に忘れて欲しくないですが、日々、記憶が薄くなってしまっています。この本は思い出すための貴重な窓となるでしょう。
 

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