第66回・元気100エッセイ教室=描写力について
エッセイにおいて、描写文は必要で不可欠な技法です。描写文を上手に書くコツはなんでしょうか。それは対象をよく観察し、作者のことば(文字)で写生することです。
文章から、読者の想像力を刺激し、イメージを作らせることです。
描写文と、説明文とは対極にあります。ビジネス文などは殆どが説明文です。叙述文学(エッセイ、小説)では描写文で書き進んでいきましょう。
作者はよく知っている人、物、事象ほど、説明文で簡単に書いてしまう傾向があります。悪い例として、
『妻は犬の散歩から帰ってきた。そして、買物に行ってくるわ、とスーパーに出かけた』
と書いてしまうと、読者はどんな妻を連想をするでしょうか。
作者自身はわが妻ですから、よく知っているでしょう。だが、読者には妻の年齢、顔の特徴、容姿、着るものの趣味などまったくわかりません。となると、読者は概念で考え、月並みな妻のイメージをもってしまいます。これでは人物描写にはなりません。
①人物描写のテクニックを身につけましょう
登場する人物の外観と、性格と、癖とを3つを組み合わせるのがコツです。そうすれば、登場人物が立ち上ってきます。
・外観……似顔絵を画くのように、特徴を見出して書いていく
眉には斜めの傷跡がある 縞柄の派手な服をきた三十代の女性
・性格……長所・短所、際立った精神的な特徴などを書く
図太い性格だ はにかむ態度 見下した口の利き方をする
・癖……言動、四肢の動きなど、瞬時の同じくり返しを取り上げる
緊張すると指をかむ癖がある 話しながらメガネを拭く
②心理描写が深まるテクニックを会得しましょう
出来事(事象)ごとに、主人公「私」の心の動きや、気持ちの移り変わりを丹念に追うことです。そうすれば、読者が感情移入してきます。
・どう感じたのか (寸前)
・どう思慮しているのか(いま)
・どう行動したいのか (これから)
これら三大要素を常に念頭に置いたうえで、「私」の心のなかを覗いて書いて行けば、心理描写が深まってきます。
③読者が映画を観ているような、情景描写のテクニックを学びましょう
一つの風景を書く場合、そのなかに多めの名詞を入れる。その名詞を修飾させることで、風景に奥行きと立体感が出てきます。
・遠景、中景、近景と遠近法を使う。
・正面に見えるもの、左と右にあるものも加えると、描写が深まります
描写文で最も大切なことは、手垢の付いた文章、使い古された比喩を使わないことです。作者の観察した目で、作者独自の言葉で書くことです。