A020-小説家

第65回・元気100エッセイ教室=作品の盛り上がり

 元気100エッセイ教室の受講生を対象に、最も指導してほしい技法は何んですか。16項目を示し、アンケートを取ってみた。最も多かったのが、『作品の盛り上がり」だった。

 長編小説ならば、「ラストでクライマックスを作りなさい」と前置したうえで、構成(ストーリーの組み立て)を中心に説明すれば、おおかた理解されるものです。

 しかし、エッセイとなると、原稿用紙に換算しても、3-5枚が平均的ですから、この範囲内で盛り上がりを作るには、かなり文章技法(テクニック)を要します。
 
 一般的に、エッセイは誰にでも書けそうな気がするものです。題名をつけて、それに見合ったエピソードを並べていく。ただ、それだけの作品は低調で、面白みがなく、迫ってくるものがありません。つまり、盛り上がりに欠けた作品になるだけです。
 読むほうも、退屈で、ときには苦痛を伴います。
 そんな作品は例を出すまでもなく、世のなかに一杯あります。

 エッセイにしろ、短編小説にしろ、枚数が少ない場合は、「盛り上がり」はどのようにテクニックで創作するべきでしょうか。
 まず書出しから緊張とか、強く興味を引くことからスタートさせることである。

 旅客機に例えれば、滑走路を走っている段階は捨ててしまい、離陸した瞬間の全開したパワーアップから書き出すことです。そして、1万メートルに達した時をもってエンディングにする。つまり、常に上昇させることで、作品が盛り上がってきます。

 プロ作家(級)を除けば、多くの人の初稿はだいたい滑走路から書いています。だから、平板になったり、冗漫になったり、盛り上がりに欠けてしまうのです。ひどいときは離陸せずに終わってしまいます。

「原稿用紙の前1枚分くらいは棄てるのがちょうどよい」
 こうすると、多くの作品は急上昇している最中から運ばれてきます。
 この先は、素材が小さくても、エピソードを積み重ねながら、『読者が先を知りたい、もっと先を読みたい』と運んでいけば、まちがいなく盛り上がってきます。

もっと先を読ませる3大要素

①各エピソードに、疑問形や自問を使えば、読者はあれこれ予測し、「次はどうなるのか」と考えながら作品を追ってきます。

②反対の考えとか、反論とか、反発とかを織り交ぜていくと、意外性から興味を強めてきます。

③伏線を張っておくと、後半にきて「あのことだったのか」と、次も期待します。

 盛り上がりのある作品は、エンディングも重要です。ラストの数行で、作者の説明文を入れないことです。
 書出しと同様に、後ろも数行~1枚は切って捨てると、それが盛り上がった後の良い読後感になります。
 
 盛り上がりを作りたければ、『最初は切って捨てなさい。後ろも切って捨てなさい
 これを前提にして、初稿では多めに書いておいてから、バサッと削る。
 このテクニックが身につけば、作品に当たり外れが少なく、常に読ませる作品が生みだせます。それが盛り上がりを作る最大のコツです。

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