A020-小説家

山名美和子著「戦国姫物語―城を支えた女たち」の出版記念会

 10月10日、東京・銀座クラッシクホール(銀座ライオンビル6階)で、歴史小説作家の山名美和子さんの出版記念会が開催された。

 著作は「戦国姫物語―城を支えた女たち」(鳳書院・本体1,600円)である。波乱の生涯をおくった、姫たちのドラマ60篇が収められている。

 同発起人代表は西木正明(直木賞作家・PEN常務理事)で、「彼女は自分の足で、全国の城を訪ね歩き、戦乱に生きた女性たちの歴史秘話を丹念に取材して書き上げた秀逸な作品です」と紹介があった。
 発起人はPEN側として浅田次郎(会長)、吉岡忍(専務理事)、高橋千劔破(常務理事)ほか、私を含めた6人と、丸山晃(埼玉新聞社)である。

 山名さんは挨拶のなかで「取材で、多くの城をめぐりました。かつて戦いの砦だった城に歳月はながれ、なお残る華麗さに目を奪われ、あるいは埋もれた歴史に哀愁を誘われます」と述べた。

 城は戦いや天災、江戸時代の一国一城令、明治の廃城令、そして空襲により、多くが失われましたが、土塁や石垣を吹きすぎる風の音、せせらぎに耳を傾けると、往時の人びとさんざめきが聞こえてくるようです、と話す。

 同会場は、PEN会報委員や広報委員の仲間たちが駆けつけていた。歓談のひと時を過ごしながら、彼女の作品の連載秘話とか、出版への過程とか、すでに二版が決まったとか、それぞれ出版関係者の話しに耳を傾けていた。


 山名さんは早稲田大学を卒業した後、東京や埼玉の公立学校で教鞭を取っていた。「きっといい先生だっただろうな」と思わせる、静かな語りと、やさしい雰囲気をもった女性である。第19回歴史文学賞を受賞し、作家活動に入る。

 彼女が姫君を描いた作品は常に、姫たちにそそぐ視線に優しさ、同情、ときには戦う女の強さがしっかり表現されている。女が城を支える精神の根幹はなにか。それが山名さんの尽きないテーマでもある。

「男たちが天下取りや新しい時代を夢見て、戦場を駆けることができたのも、同じ夢を抱いて領土や家臣、跡継ぎの子らを保護し、留守を預かった女たちがともに歩んだからこそのことでした」と壇上で強調していた。そして、お祝いの花束をもらって微笑んでいた。

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