第58回・元気100エッセイ教室=文章のリズムと流れ
リズム感。それは音楽において最もたいせつな要素です。と同時に、奏者や歌手のいのちです。
体操選手でも、リズム感のある人と、そうでない人の差は出ます。一般人の生活そのものにも、リズムがあり、大切な要素となっています。
文章においても、リズムはとても大切です。文のリズムが良いと、作品に味が出てきます。読み手の頭のなかに、心地よく言葉が入ってきます。次つぎ、流れを追いたくなります。
反面、文章のリズムが悪く、起伏がなく、単調な流れになると、読み手は飽(あ)きてしまいます。
それは何も、エッセイだけではありません。
長編小説でも、オーケストラのように人物を巧妙に配置し、ひとりずつ動かす、それぞれにリズムを持たせる必要があります。あるときには静かにせせらぎを流れる音のように恋を語り、時にはドラムを連打する激しい逆境の人生が必要です。
平坦なありきたりの甘いリズムばかりだと、数百枚の小説などはまず読み切れないものです。
エッセイも同様です。短文のなかに、きめ細やかな描写がある。それでいて、スピードのあるリズムなども要求されます。ただ単調にストーリーを運んでも、内容がよくても、印象が薄い作品になります。
花を摘むのんびりした人びと、むこうには成田空港へのスカイライナーが走り抜けていく。一つキャンバスのなかに、別々のリズムが共存しています。
これを一つの情景文として、エッセイ作品で描く場合には、2つのリズムが必要になります。
文章にリズムをつけるには、どのようにすればよいのでしょうか。そんな疑問に応えてみます。
ポイント① 【上手に文章リズムをつける方法】
A 長い文章(ロング・センテンス)の後は、あえて短い文章にする。短い文章が続くと、こんどはやや長い文章にしていく。これがリズムの基本です。
きっちり正確にやりすぎると、却ってリズム感を失くします。
B パラグラフ(複数のセンテンス・各段落ごと)の分量には、たえず変化をつけていくと、作品全体にリズムがついていきます。
これら2つを常に意識して創作活動していると、個性的な文体と独特のリズム感が生まれてきます。作者名を伏せていても、リズムと文体から、誰の作品か判ってくるものです。
ポイント② 【文章リズムが良くなる方法】
A 「文章スピード感をつける場合」
急ぐ、あわただしく、せっかちに……、こうした状況を描写するiは、ショート・センテンスの連続で処します。読点も多くします。改行もやや多くします。
B 「ゆるやかな流れの文章にする場合」
のどかな、静かな気持ち……、ややロング・センテンスにします。パラグラフも厚くします。ただし、あえて意識的に漢字を少なくし、四文字熟語なども避けます。(漢字が多くて長い文章は、読む前に嫌になるもの)
C 会話文「」「」と地の分の比率でも、文章リズムができます。
「」がやたら連続し、地の文がほとんど挟まれていないと、薄っぺらな作品になります。
D リズムチェックをする。作品が書きあがれば、大きな声で読んでみることです。
ラストまでスムーズで音読できるように直す。くり返す。(このくり返しが大切)。書出しから結末まで、流れるように大声で読めたならば、作品全体に良いリズムが生まれています。