第57回・元気100エッセイ教室=エンディング(結末の書き方)
多くの人には、名作映画のラストシーンのいくつかが心に焼きついているはずです。「太陽がいっぱい」「サウンド・オブ・ミュージック」「ジョニーは戦場へ行った」……、私には、『シェーン、カムバーック』と叫ぶ、少年の声が谷間にこだます場面がつよく残っています。
エンディング(結末)は作品の最大の勝負どころです。武士の真剣勝負でいえば、最後に振り下ろした一刀で、相手を斜めにスパッと斬る。そのような切れ味の良さが求められます。
エッセイは書き出しで、まず読み手を引き込みます。それに失敗したら、もう終わりで沈没です。読者を引き込んだ先は、内容勝負というよりも、結末勝負です。エッセイのエンディングは、名作映画のラストシーンと同様に大切なものです。
・結末が良いと、「良い作品を読んだ」という評価になります。
・結末が悪いと、最後まで「期待してきて裏切られた」心境になります。
ストーリーがあるものには、終わり方の定石や定型がありません。映画でも、エッセイでも、作品ごとに内容が違うから当然です。ただ、エンディング効果を上げる、上手な方法はあります。
【良いエンディング(結末)の書き方】
① 多めに書いておいて、2、3割ほど手前ですぱっと切って棄ててしまう。余韻が生れます。(コツ)
② 随所に伏線を張っておいて、ラストで結びつけてくることです。
③ 「私」の期待や、希望など、心のなかを表現する。心理描写で終わらせてください。
④ 苦境を描いても、涙とか、悲しみとか、泣くとか、それら悲哀のことばは途中で使わない。
極力引っ張ってきて、最後の最後で、切り札としてつかう。
⑤ 読者を泣かせることです。
【悪い結末として】
① 冗漫で、ダラダラと書き過ぎで、なかなか終わらない。
② 論文・会社レポートのように、作品に結論づけたり、考え方を最後に取りまとめたりをする。
③ 最後の文章がロング・センテンスで、意味がつかめず、終わってしまう。
④ 最後の数行で誤字、脱字がある。その過ちが読後の印象になってしまう。
エンディングの成功作品は、「作者がこれを言いたかったのか」と読者に感じ取らせることです。
ただ、作者が言いたかったこと説明(説明文)したら、愚作になります。どこまでも描写文(情景描写か心理描写)で終わらせることです。そうすれば、読み手の心に焼き付きます。