第52回・元気100エッセイ教室=語尾には敏感になろう
エッセイ作品は小説と違って、限られた文字数のなかで、人生を上手に描き出す必要があります。その枠組みのなかでも、書き手によって短い作品、長い作品、と得意分野が違ってきます。短距離ランナーと長距離ランナーと似た体質の違いです。
読み手も同様です。短くてシャープな作品が好きとか、多少長くても、じっくり味わえるほうが良いとか、それぞれです。
いずれにしても、エッセイはストーリーよりも、文章の深みと味わいがより重要になります。
人間の行動や心の動きは、ほとんどが動詞で表現されます。日本語の場合は、動詞が語尾にきます。
作者はすぐれた作品を書くためにも、ワンセンテンスごとに、語尾に敏感になる必要があります。ふだんの何気ない言動や感情でも、語尾の動詞を上手に変化させていけば、魅力的な文章になります。
【今講座のレクチャーは、語尾の工夫と留意点です】
①体言止めは味付けの無い文章になり、素材・情報だけの提供です。
・危険だ、と彼は背を丸めた姿勢。
⇒ 危険だ、と彼は背を丸めて身構えた。
・私は姉と妹の三人兄弟。
⇒ 私は姉と妹の三人兄弟で仲がよかった。
・話の途中で、彼は相づちばかり。
⇒ 話の途中で、彼はうなづきばかりで、心の中がわからない。
②感嘆符は語尾が書き切れない、中途半端で未熟な表現です。
・船を発見!
⇒ 船を発見したぞ。
・オゾン層を破壊!
⇒ オゾン層を破壊させてしまった。
③推理、推測、予測、疑問は積極的に取り入れる。
④時間の経過に幅が出る、語尾の技法を身につけましょう。
・この家は代々続いた。
⇒ この家は代々続いてきた。
・彼は遅れた。
⇒ 彼は遅れてきた。
・私は自分の言葉に酔った。
⇒ 私は自分の言葉に酔ってしまった。
⑤紋切り型の語尾から脱却して、センテンスごとに語尾に変化をつける。
「だった」「いく」「組む」「した」「行こう」……、ラストの一文字に凝ると、深みが出ます。