A020-小説家

歴史ファンは必見、故早乙女貢さんの邸宅見学と文化サロン=鎌倉

 読書の秋である。木々が色づく紅葉が近づいてきた。初秋から晩秋にむかう鎌倉は魅力がいっぱいである。

 故・早乙女貢さんは歴史・時代小説の大作家だった。(2008年12月23日に没)。その邸宅では、ほぼ毎月1回、「鎌倉文化サロン講演会」が開催されている。2010年7月からスタートし、約1年間で17回開催されてきた。主催は「士魂の会」(佐藤会長・8人のメンバー)で、定員は30人(事前申し込み制)。なんと無料である。

 早乙女貢さんは直木賞作家で、文士の町鎌倉を愛し、執筆に励んだ。歴史小説の大作『会津士魂』(全21巻)で、吉川英治文学賞を受賞している。

                            生前の早乙女貢さん
                             (撮影:鈴木康之さん、2008年2月15日)                                           

 早乙女文学とは何か。薩長が作った歴史観に異議を唱え、見直しを説き、それらを様々な作品群に描き込んでいる。

 講演会のメイン講師は、生前の早乙女さんと親交の深かった、高橋千劒破さん(『歴史読本』編集長、編集局長を経て、日本ペンクラブ常務理事)と清原康正さん(文藝評論家・同理事)である。

 

 敗れた会津から歴史を見ると、江戸時代の平和国家(一度も国内外で戦争をしない)が、明治以降は軍事国家に変えられてしまった。(西南戦争の後は、10年毎に外国と戦争を引き起こす、戦場はすべて海外だった)。

 260年間も戦いのなかった徳川幕府を倒した、薩長の権力者たちは、京都御所の明治天皇を遷都もせず、江戸城に移して閉じ込め、神化した。その上で、何ごとも「天皇のお言葉だ」と捏造し、それを利用して強欲、私欲に走った。その一つが、政治家と軍部がともに利権と利益を得られる戦争だった。


 明治天皇はみずから考え、言葉にし、それを発したものなどほとんどない。「教育勅語」すらも、天皇自身の思慮でなく、薩長の人物が都合よく天皇利用で創作したものである。それを国民に押しつけ、天皇の名の下に、戦いで尊い命を捨てさせた。


 会津側の敗者から見れば、これら薩長の欺瞞の本質が見えてくる。敗者の史観から、日本近代史を見ることも大切である。(講師の説明より)

 
「鎌倉文化サロン講演会」にはゲスト講師も招かれる。9月17日(土)13:00~14:30は、新田次郎賞を受賞した、売れっ子作家の植松 三十里さんである。直木賞に最も近い作家だともいわれている。

 演題は「戦国の姫・お江をめぐる人々」である。現在、放映されているNHK大河ドラマでも注目のお江の話し。「お江の最初の結婚相手だった佐治一成と、娘である千姫のことなどを中心にお話します」と植松さんは話す。

 講演会は邸宅1階の応接フォールで行われる。講演者が壇上と違い、参加者と顔を突き合わせて行われるので、対話するように親しみ深く話しが聞ける。小粒で内容が濃い講演会だといえる。


 当日は邸宅の内部と、早乙女さんの遺品の一部が公開されているので、写真、原稿、絵画、愛蔵の道具など数々が見学できる。

 書斎や応接間の多数の蔵書を垣間見て、歴史作家がいかに膨大な資料と格闘しながら作品を生み出すか、創作の裏舞台を知ることができる。

 秋の鎌倉の古刹見物や散策と「鎌倉文化サロン」を兼ねると、贅沢な一日が過ごせるだろう。早乙女邸は鎌倉大仏のちょうど真裏で、静寂なところである。(イラスト地図参照・左クリックで拡大)

     
「第47回国際ペン東京大会と井上靖を語る」早乙女さん インタビュアは穂高健一
               (撮影:鈴木康之さん、 2008年2月15日、日本ペンクラブ)


   【鎌倉文化サロン・開催予定】

     第19回 2011年10月29日(土)13:00~
           講師:峯島正行氏
     第20回 2011年11月26日(土)13:00~
           講師:藤原美子氏

   【申込み・問合せ先】

   士魂の会:代表・佐藤 公雄
         TEL 090-1540-8333
   講演会場所:早乙女貢邸
       (鎌倉市長谷4-11-15 江ノ電・長谷駅下車徒歩10分)


  【引用・参考資料】
  記事とイラストマップは「士魂の会」HPから引用しています。

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