A020-小説家

大荒れの日本ペンクラブ・総会、作家たちは歯に衣を着せず(下)

 昨年9月には国際ペン東京大会が25年ぶりに開催された。総額2億円の支出があった。成功裏に終わったが、会計処理において、大きな汚点となる、簿外口座の存在があった。さらには予算超過でも理事会の承認もなく進んでしまった。

 執行部は最近まで、簿外口座の報告もなく、その存在を知らなかった。この体質にも問題がある、と会員からは総会で厳しい追求となった。

 公認会計士の調査によると、簿外口座による(個人的な)不正はゼロ。だが、今後において、この体質は問題が多い、と指摘された。


 国際ペン東京大会の文学フォーラムでは、広川隆一さんの「人間の戦場43年」が早稲田大学小野梓記念館で開催された。
 総会で、広川隆一さんが「会計処理が曖昧」と噛みついた。

 故立松和平さん(当時・平和委員長)から平和委員会企画写真展を持ち込まれたとき、「予算がかかると開催が難しい。最小限の予算でやれないか」と要請された。立松さんは故人となったが、その意思を受け止めて「私は切り詰めて、人を介して展示経費を削りに削った、100万円以内で実施にこぎつけた」という。

 ところが、収支報告書には約一千万近い金額が掲載されていた。それを問うと、「日本ペンクラブの歩み」750万円が合算された処理だった。
「こちらの展示は業者任せ。金額があまりにも違いすぎる。そのうえ、会計処理が大づかみすぎる」と怒りの口調で責めた。

 他の複数の質問者からは、「謝罪のみだけではだめだ、ばら撒き体質を作り直すことだ」と迫った。実例として、「使った業者のアルバイト代が一人3万円、残業代が5000円。こんな経費をノーチェックで認めている。日本ペンクラブは会員の会費でまかなわれている、という認識が薄すぎる」と言い、体質改善を求めた。

 須藤甚一郎さんは「調査機関を作り、徹底して調べるべきだ」と迫った。


 轡田 隆史(くつわだ たかふみ)さんは、この団体はボランティアで運営されている。追求を厳しくすれば、執行部全員が「われわれは営利とか、金儲とかでやっていない。それならば、責任を取って辞める」と言いだしたくなるはずだ。
 それでは誰もいなくなる。裏金はないという。ここは支出の内訳をペーパーで開示すればよい。

 森 詠(もり えい)さんは「予算外で約4千万円も超過している。どこで、どう使ったのか。説明責任がある」と、報告書をまとめた吉岡忍常務理事に強く迫った。

「金勘定はわからないし、この問題を知ったのは最近だ。国際ペン東京大会約2億円のうち、文学フォーラムはノーベル文学賞作家を招いたりしても2200万円で抑えた。乱脈的に言われるのは心外だ」と吉岡さんは述べた。

 紛糾した総会はとても決議を取れる状態でなくなった。議長の山田健太さんは困惑し、「再度、総会をやりますかね」と執行部の顔を覗き込む。
 予算が決まらないと、数ヶ月間は、日本ペンクラブの活動は何もできなくなる、と吉澤一成事務局長は延べる。

 会員は誰もが、日本ペンクラブの活動をとめても良いとは思っていない。議長の提案で、調査委員会を設置する、会員に対して支出内訳の開示するなど、いくつかの条件付の決議となった。反対、保留もいたが、2011年度予算は賛成多数で決まった。

 日本ペンクラブは「言論・思想の自由」を守る団体だけに、2011年度総会では、この責任は誰にあるのかと、歯に衣を着せない鋭い質問が飛び交った。

 官公庁から天下り理事は一人もいない。理事も各委員もみな無給で、交通費すらも自分もち。(海外に行く場合も、自前が多い)。ふだん「お金を出して、仕事させてもらう団体だ」と軽口も出る。
 だからこそ、攻守とも、信念に基づいた自由闊達な発言ができる。それを強く感じさせた、内容の濃い総会だった。

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