第48回・元気100エッセイ教室=マンネリの解消法
人間は旧態依然とした状態を続けると、けん怠を覚えます。そして、惰性になります。エッセイや小説など文学の創作活動では、筆力が高まり、文章技術が身についてくると、マンネリズムが起こりやすくなります。
創作の力量は右肩上がりの一本調子で、上達などしません。階段を上るように、一つ上がれば、水平状態になります。そのまま書き続けていれば、力量がふいに一段上がます。そして、その力量で水平状態になります。
この水平状態がくせ者です。
エッセイ作品の素材がいつも日常的なものだと、マンネリズム現象に陥ります。毎回、同じ色合いの作品を書いていると、作品がいつしか平板になり、切れ味が悪く、単調な作品に仕上がってしまいます。上手にはまとめているが、作品に光った部分がなくなります。
それを如何に打破し、超えていくか。
人生は思い通り、順風満ぷうで歩んできた人はいません。ある出来事に失望したり、落胆を覚えたり、失敗したり。失意の連続だったり、時には死にたい、と考えたりしたこともあるでしょう。恋すれば失恋し、結婚すれば離婚し、親しい友人や肉親とも死別する。苦悶と挫折の過去があるはずです。
「妻にも知られたくない、友達にも隠したい、死ぬまで伏せておきたい」
だれもが必ず心に負の世界、強いコンプレックスがあるはずです。そこに素材を求めているかぎり、創作活動はマンネリズムに陥りません。
書くことが苦しくて、辛くて、泣きたくなる。その勇気からいつしか逃げて、小手先だけでエッセイを上手に仕上げよう、書こうとしている。だから、マンネリズムが起きるのです。
人生は綺麗ごとだけで生きていられない。「心の負の世界」「心の痛み」に、もう一度、チャレンジすることです。
自分がもっている醜さ、狡さ、隠蔽に立ち向かう。その勇気を呼び起こせば、創作のマンネリズムから解消されます。と同時に、上手・下手とは関係なく、作品はいつも読者の共感、感動を生みだせます。
写真:東京・自由が丘、4月24日