A020-小説家

39回「元気に100」エッセイ教室=文章スケッチで、表現力の強化

 今回は文章スケッチについて、講義した。
 作者は机の前で、原稿を書いていると、頭のなかに定着した情景で書いてしまう。つまり、筆先で描いてしまうものです。

 その結果として、具体的な実例として書いたつもりでも、読者には特徴がなく、変哲もなく、細かな点が欠落した描写(概念的な表現)になっています。

 これが読者の退屈さを誘います。いかに改善するか。どうすればよいか。最良の方法は書斎から出て、「文章スケッチ」することです。ノートに文章スケッチしてきた描写を、作中で挿入すれば、思いのほか、かんたんに密度の濃い、描写力のある文章が作れます。

 
①「一階建て、二階建て、マンション」
 ありきたりな言葉で書かれると、作者にはわかっていても、読者にはイメージがわかず、単なる住まいとして理解してしまいます。


【文章スケッチ】
 玄関先は3段の石段、木製のデザイン扉、アルミサッシュの窓、茶色の樋、雲形のもようの手すり、ブロック塀、木蓮などの庭木、すみれの花、片隅に自転車、その工具箱……。車庫は空、南側は空き地……。屋根ではカラスが啼く。


【作中に】友人の家は高円寺駅から約七分の住宅街だった。二階建ての玄関先の花壇では、スミレが満開だった。3段の石段を上がれば、しゃれた木製のデザイン玄関戸だった。呼び鈴を押した。


②一般的に年配の作者は、「若い女性」と書いてしまう。

【文章スケッチ】25歳くらい。黒髪は肩にかかる。眼は一重、唇は薄い、コートの襟は狐?の毛皮、手袋をしている。茶色の靴、ひざ下ブーツを履く、セーター、銀色の腕時計、縞模様の折りたたみ傘、ストライブのパンツ。
 

【作中に】知人の娘は、毛皮の襟のコートを着てやってきた。一重まぶたの顔立ちから、二十歳過ぎているように思えた。カジュアルな服装からすれば、十代後半かもしれない。


 読者は作者の頭の中まで見えません。文章スケッチを多用し、読者の想像力を刺激してあげましょう。
 書斎だけではいいエッセイはかけません。さあ、メモ用紙をもって戸外に出ましょう。


【演習】 写真を撮ってきて、それを見ながら書く。それもコツの一つです。

 掲載の写真を見ながら、「釣り人」という題名で、800字の作品を作ってみましょう。周辺の道具を書き込めば、釣りのイメージがうきあがります。

 (写真の上で、左クリックすれば、拡大します)

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