原作者・新津きよみさんが、フジTV系・連続ドラマ「トライアングル」を語る
毎火曜の夜10時からフジ系列で、連続テレビドラマ『トライアングル』が放映されている。原作者は、人気推理小説作家の新津きよみさん。関西テレビ(大阪本社)が開局50周年記念のために、依頼した、書き下ろし作品である。
日本ペンクラブ2月例会が2月16日、東京會館でおこなわれた。同会場で、新津きよみさんに、「原作者として、TVドラマ『トライアングル』をどう見て、どう感じているか」と直撃インタビューしてみた。広報委員会委員の鈴木悦子さんも質問に加わった。井出勉・事務局長代理も興味ぶかく聞いていた
穂高 「ちまでは評判の良い連続テレビドラマで、私の知り合いは家族全員で観ていますよ。いまは何回くらいまで進んでいるの?」
新津 「あしたの火曜日夜で、七編(話)です」
穂高 「何回くらい連続する予定なの?」
新津 「さあ? TV局から台本は貰っていないし、知らされてないの。『トライアングル』HPには未定と書かれているし、判らないわ。私が書いた原作はエピソード(事件)は6、7編(話)で消化されて、終っているけど……。その先は脚本家のオリジナルだから、どうなのかしら…?」
鈴木 「TVの連続ものは、ワンクールがだいたい10回か、11回なんですよ。だから、その辺りじゃないかしら」
作家の手から原作(作品)が離れると、TV局と脚本家との打ち合わせで進められ、原作者にはフィードバックはないようだ。
鈴木悦子さん(左) 新津きよみさん(中) 井出勉さん(右)
穂高「ドラマを毎回見ている視聴者は、『犯人は誰か』と一番興味があるはず。原作者の新津さんにすれば、犯人は判っているんでしょ?」
新津 「さあ? 台本は頂いてないから、判らない。だけど、私はミステリー作家だから、あるていど推理して、『この人じゃないかな』とわかっている。だけど、それは誰にもいわない~。それを裏切るような結末だと、おもしろいかな、という気持ちはありますよ」
穂高 「推理作家の犯人像を裏切って欲しい、というわけだ」
新津 「裏切って、納得できるだけの、裏づけ動機があれば、なお良いかな、と思っています」
鈴木「原作者までも、うーむ、と唸らせるような、脚本だったら、新津さんは納得する、という意味ですよね」
鈴木さんは大手出版社の編集畑で、いまはフリーのベテラン編集者だ。
新津 「ミステリーであるけど、ヒューマンドラマだから、人間的な悲しさとか、そういうものが感じられたら、良いなと思う。あまり言っちゃうと、ネタバレになるから……」
穂高 「作家が登場人物を男として、女として描く。これら作中の人物と、TVドラマで演じられる俳優のイメージとか、合っている?」
新津 「私はふだんから具体的に、人物を特定したイメージで書かないタイプなの。作中の国際警察刑事の郷田亮二(35)は、平均的な好青年をイメージしていたから、江口洋介さんがやる、と聞いたときは、あの方は180~185センチあるから、大きな方だな、という違和感はあった。私は175センチの平均的なイメージで書いていたからね。実際、TVが始まって毎回観ているうちに、ちゃんと受け入れられるし、画家・葛城サチ(30)の広末涼子さんも同じで、違和感もなく観られるようになったわ」
鈴木 「TVの脚本は、アテガキがありますよね。脚本を書く前に配役が決まっていて、あの人はこうだな、という書き方(アテガキ)の作家はずいぶんいますよね。トライアングルの配役は、原作ができて決まったから、新津のイメージとはちがって当然だし、実際に、俳優のほうが作中の人物よりも年齢がすこし上だったみたい」
新津 「それはいえるわ」
鈴木 「作家がはじめから書籍として、文庫として、作品を書く場合は自由に書けると思うけど……。この点はどうですか?」
新津 「自由に書けるときは、(執筆の)楽しさがあるわよね。今回は関西テレビから依頼を受けたとき、プロディユーサーから、作家性を存分に生かして伸び伸び書いてください、といわれたの。制約があるとすれば、大阪と上海と東京を絡めてください、という条件がついたくらい。主人公の年齢とか、誰をイメージしてとか、一切なかったわ。ふつうに書き下ろすのとおなじように、いっしょの過程を経て書けたわ」
穂高 「大阪と上海と東京の制約について、実際どうでした?」
新津 「制約については、ふだん編集者から、今度はこういう主人公で、こういう年齢とか、仕事とか、どうですか、といわれるので……、それと同じかな。過去にも、場所の制約がありました。『九州に行ったことがなければ、九州に行ってみませんか、九州に取材して、何か書きませんか』と言われたりしました。それとおなじ次元かな、と思えば同じ次元です」
穂高 「関西テレビだから、大阪はゼッタイに出す。この点について、もう少し語ってくれますか」
「もう放映も始まり、視聴者にも判っていますから、打ち明けますが、葛城サチ(広末涼子)が大阪南の路上に棄てられていた、という設定からはじまっているんです」
穂高 「新津さんは長野県・大町市出身だから、大阪弁は知りませんよね。そのあたりについて?」
新津 「書籍もそうですが、編集者を介して、大阪弁が得意な人にチェックしてもらっています。今回も、最初は信州弁で、『そうずら』とか書いています」
穂高 「信州弁で書いて、大阪弁に翻訳してもらっているわけだ」
新津 「そういうことです。現地取材で、大阪にも、上海にも行かせて頂きました」
鈴木 「大阪とは文化がちがう。そんな感じでしょ」
新津 「大阪は、大阪万博以来だったの。ブランクがありすぎて、大阪ってもこんなに綺麗だったの、水の都みたい、という感じでした。遊覧船だって、水上バスだったし。通天閣ははじめていったところです」
鈴木 「大阪は賑やかだったでしょ」
新津 「頓堀などは夜に行ったから、賑やかだったわ。アメリカ村も見て、おもしろかった。食べ物も美味しかったし、安かったわ。大阪はいいところ、と思いました。児童福祉施設は綿密に取材させていただきました」
売れっ子、推理小説作家の新津さんは、次ぎのパーティーにいかない、と言い、東京會舘を後にした。
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