【推薦図書】中澤映子著『三本脚のアイが行く』=小さな命の四季
あなたは動物エッセイを読むとき、なにを期待しますか。「人間と動物の心のふれあい」「感動の出来事に巡り合いたい」「生命の大切さを再認識したい」と多くの人はそんな想いだろう。
それに応えられる感動の動物エッセイが出版された。中澤映子著『ワン・ニャン歳時記 三本脚のアイが行く』(長崎出版・定価1200円)で、副題「小さな命の四季(じかん)を綴った俳句付」である。
作者・中澤映子さんは東京女子大卒で、博報堂に入社し、定年まで勤務した。広告制作ひとすじに37年間を過ごす。国内外のCMコンクールで多数の受賞作品がある。
動物エッセイ(俳句付)の出版は初めてである
彼女が嫁いだ中澤家は、動物愛の塊だった。彼女の本心は「犬は好きでも、猫は苦手だった」という。大手広告会社勤務の夫や、義両親は路傍でさまよったり、段ボールで放置されたり、傷ついた瀕死状態の犬や猫に出合うと、「見るに見かねて」引き取っていた。そして、一つ屋根の下で暮らす。
最もたくさんいたときは犬の親子が5人、猫が16人である。
ふびんな犬や猫を連れ帰れば、その世話で家族はてんてこ舞いする。「こまった、コマッた、困った」と言いつつも、見捨てておけないのだ。それをもじって『小俣(こまった)ファミリー』と称している。
街なかのペットショップで可愛いからと言って買ってきた、そんな動物たちとはまったく違う。