日本ペンクラブの9月度例会=今年は日本に喜びが2つ、危険が2つ
2か月に一度の日本ペンクラブの総会が、東京會館で開催された。
浅田次郎会長は、今年は2つのビッグニュースがあった、とあいさつで語った。
一つは富士山の世界文化遺産に登録だった。浅田さんは幼いころ銭湯通う日々で、大浴槽の壁面には富士山のペンキ絵が描かれていた。気持ちを温めてくれたし、そこからも富士山への愛着が育った。
国際ペン東京大会で、国際委員のメンバーが東京から京都に向かう車中で、「富士山に近づくと、みんなが窓際に集まった。往路は雨だったが、復路では富士山がくっきり見えた。外国人にいかに人気かわかりました」と話す。
今年は、もう一つ喜ばしい話題として、東京オリンピックの決定がある。
「先のオリンピックは私が中学生でした。その頃、オリンピックは何度も日本にくるものだと思っていた。いや、長かったですね。皆さんも、こんどは何歳の時かな、と計算されるでしょう。そのときは、私は68歳です」
みずからの年齢を明かしていた。
その一方で、原発は大丈夫か、と不安な問題を語る。福島原発事故では20万人がまだふるさとを離れてプレハブに住む。ここらの解決がおなざりにならないだろうか、と不安を覚える、と話す。
東京に一極集中の傾向がさらに強まるのではないか。
これらは気になるところだ、と功罪の両面を見据えていた。
安倍政権が推し進めている「特定秘密保護法」と、「憲法改正の方向にある」をどう扱うか、という重要な問題が話し合われた。
特定秘密保護法(秋の臨時国会に提出予定)は、国の機密を漏らした公務員を罰するもの。最高10年の懲役刑を科す内容となっている。公務員を委縮させる恐れが十二分に予測できる。
さらには、法の解釈と運用によって、同法が悪用される危険性が高く、取材の自由、報道の自由を奪う。日本ペンクラブとしては反対する。
憲法の改定も、言論・表現の自由を奪いかねない。ここらはしっかり話し合う必要がある。
『文学と憲法』と出して、フォーラムが10月10日には予定されていると発表した。
国際ペン2013年がアイスランド共和国の首都・レイキャヴィークで、9月9日から開催された。同大会に参加した、佐藤アヤ子さんが、その報告を行った。同大会が開催される首都レイキャヴィークにつくと、360度見渡せる氷原だった、と話す。
「地球の果てにきた雰囲気でした」
人口が30万人の国で、そのほとんどがレイキャヴィークに住む、とつけ加えた。
同大会では堀武昭さんがペン事務局長として再選された。(賛成67、棄権7、反対ゼロ)。任期は3年である。日本人初の事務局長だし、再選されて喜ばしい。
人権問題に関する議題が多かった。他に目立ったのは、「少数言語の保護」と「表現の自由」におけるエジプトやトルコ(クルド)などの問題だった。
国際ペンに、新しくミャンマーとインド(これまでは加盟しているが、もう一つ)が加わった。
来年の開催国で紛糾したが、キルギス共和国の首都ビシュケク(旧名フルンゼ)に決まった。同国は誘致活動が活発で、大統領の特使の大臣も来ていたという。
佐藤さんは、会場で唐突に指名されましてと言うが、明瞭な語りで報告を行った。さすが大学教授である。