【オピニオン】 政党政治はもはや死に態だ=平成の治安維持法
安倍政権が11月26日、「特定秘密保護法案」を強行採決で衆議院を通過させてしまった。次の世代には間違いなく1000兆円を上回る国債の借金、さらに「平成の治安維持法」の悪法まで作り、大きな負担を与えるだろう。
「あなたたち(親、祖父)の世代はなんて酷(ひどて)いことをしてくれたのですか。……」
次なる世代には、私たちは糾弾されるはずだ。
大正時代の『治安維持法』が国民の不幸に及んだ。この法律を拡大解釈した、ときの政府は国民に思想弾圧を加えた。「安政の大獄」よりも、はるかに多い獄中死をもたらした。
だれもが逮捕が怖くて、戦争突入すら反対を言えず、結果として緑豊かな日本の多くの都市が焼け野原になり、若者たちが血を流し死んでいった。
国土を焦土化し、廃墟にしたのは、まさに世界最悪の悪法とまで言われた「治安維持法」があったからだ。この歴史から、学ぶことはできなかったのだろうか。
政権や権力者は不都合なことを隠したがる。それが外国に漏えいすること
よりも、国民に知られることが怖いからだ。だから、「特定機密保護法案」を出してきた。
衆議院を通過した今、国民が声を大にして「参議院でストップ」と言っても、ほとんど関与できない現実がある。この際、「政党政治」ははたして正しい民主主義なのだろうか、と問うてみよう。
「選挙で選ばれた数百人が政治を支配する」。国民比率では数万分1のわずかな国会議員が、数年間にわたり、やたら法律を作りつづける。これは期間限定の独裁主義ではないだろうか。民主主義という、口当たりの良い言葉で包み込まれているが、どう考えても「期限独裁主義」である。
『紙』の時代は投票用紙しか手段がなくなった。ある意味で、政党政治は最も有効な手段だった。『デジタル』の進化した今、政党政治はしだいに民意が反映しない、老朽化した政治体制になってきた。IT時代に即した、国民が立法に対して意思表示を示す、『直接投票政治』へと進むべきだろう。そのほうが民意を十二分に反映できる。
一つ法律、予算、事案ごとに国民が成否を出すシステムは作れるはずだ。
かえりみても、衆議院・参議院選挙はムードで決まる。メディアが持ち上げた政党が大量に票を伸ばす。小泉政権、民主党政権、安倍政権はすべてムードで誘導されて大量得票を得てきた。「郵政」「自民逆転」「経済成長」一つ政策の掲げ方の賛否を問う選挙だった。
その結果として何が生れたのか。政府は全信任を得た顔で、あらゆる法律を作っていく。この矛盾はもはや解消すべき時代にきている。
政党政治が陳腐化してきたと、国民自身も自覚するべきだろう。
明治時代から西洋の民主主義を学び、取り込んできた。その欠陥が見えた今、それを改善し、新たな立法システムを作るべきだ。「立法」は国民が決める。選挙で選ばれた政権は「行政」を担う。「司法」も国民が関わる。
外国に先駆けて、日本人がこうした最新の民主システムを構築していくべきだろう。世界の魁(さきがけ)となってもいいだろう。
これを推し進めれば、国会議員はきっと利権を失いたくないから、大反対するだろう。『ITに弱い人はどうするのか。身体障害者は投票できるのか』と難癖をつけるだろう。「賛成」、「反対」とテレビに向かって一言いえば、音声で読み取れる時代は、もうそこまで来ているのだ。
IT進化はすさまじい。わずか1秒間あれば後楽園ドームの観客3万人の1人ひとりが特定できる。ボイス(声)認識はもうセキュリティーのなかに組み込まれている。
有権者が一言「賛成」、「反対」といえば、瞬時に国会で集計できるのだ。せめて、重要法案はこのシステムを組み入れるべきだ。
いまから投票システムを研究する国家的プロジェクトをつくれば、勢い推進されるだろう。矛盾に満ちた政党政治から脱皮し、新しい政治体制の社会を作るべきだ。
こんかいの「特定秘密保護法案」は平成の治安維持法だとまで言われていながら、メディアの動きが鈍かった。月刊誌、週刊誌はほどとん取り上げず、新聞も片隅に置いてきた。
思想信条、報道の自由の危機なのに、新聞は衆議院通過の「強行採決」のほうが目立つ。本気で報道の自由に立ち向かっているのか、「特別秘密法案」に反対しているのか、と疑いを持ってしまう。
一部新聞は『参議院の力が試される』としているが、ジャーナリストは「報道の力」、作家は「ペンの力」が試されているのだ。本質の捉え方が違うし、タイトルの踊り方がちがう。
大正時代の「治安維持法」が10年、20年後になって牙をむいてきた。そして昭和時代に生きた人たちを最恐の生活に陥れた。「若い命を大切にしなかった」時代に及んだ。このままでは、平成の「特定機密保護法」が可決され、次世代を苦しめることになるだろう。
あなたも、私も、ともに同じ世代としてこの法案を作った責務があるのだ、と認識するべきだろう。