ここしか生きていく道はない=クラッシック歌手・川島由美(下)
川島由美さんは正統派のクラッシック歌手である。活動の範囲は広く、昭和音楽大学の非常勤講師、東京都ヘブンアーティストの活動も積極的である。ソプラノ弾き語りスタイルで、上野公園、都営地下鉄(新宿西口駅)などにおいて日本の童謡、唱歌、世界の名曲を広める演奏活動をおこなう。
「円盤投げと歌唱でつかう深部の筋肉は同じです」
そう語ってくれた川島さんは、身体の軸の使い方などの指導をふくめた、ボイストレーニング講座の活動もおこなっている。
石井武則さんは3年前から、川島さんから、町田教室でボイストレーニングで声の出し方を学びはじめた。最初の1時間は、胸、横隔膜、腹部の体操である。あとの1時間は歌の発声となる。
「声の出し方がわかりやすく、川島さんは上手に説明してくれます。知っている体験をすべて出してくれます。出し惜しみがない。それが魅力です。だから、生徒数が増えています」
石井さんは彼女の誠意と情熱に感動し、「川島由美後援会」を立ち上げた。後援会の事務局長である。夫婦でコンサートには出むく。
川島さんは5月20日に和光大学ポプリホール鶴川(町田市)で開催された『川島由美・CD「四季のうた」発売記念コンサート』では、童謡、歌謡曲、ミュージカル、オペラアリアまで、2時間21曲を歌った。
「すごい体力です。歌手が連続21曲など、ふつうはできません。歌う表情が豊かで、聴く人の心に届くソプラノシンガーです」
石井さんは体力の賞賛のみならず、彼女の幅広い音域とレパートリーも讃える。秋葉原駅コンサートで聞いた直後だけに、それは納得できた。
同駅に出むいていた『母よ』の作曲家の石黒さんは、川島さんについて、「母の力強さを明るいイメージで歌ってくれます。たとえ80歳、90歳の老齢になっても、その方が母を思い出すと、それは若い日の母親です。それを歌で表現してくれています」と話す。
CD『母よ/この街で』が発売されている。このなかの「この街で」は、新井満さん(日本ペンクラブ常務理事)の作曲だ。
日本ペンクラブは毎年3月3日に、「平和の日」を全国各地の持ち回りで開催している。(大江健三郎さんが提案し、国際ペン・本部ロンドンが3月3日に「平和の日」と決めてから、約25年間余りにわたりイベントを行っている)
2005年の日本ペンクラブ主催「平和の日・松山の集い」の開催前日に、関係者が市役所に市長を表敬訪問した。「21世紀に残したいことば」で松山市長賞を受賞した「恋し、結婚し、母になったこの街で、おばあちゃんになりたい」が新井さんの目にとまった。この言葉に感動した新井さんが、即興で作曲した。翌日の1000人以上の大ホールで披露した。それが全国に広がったものだ。
新井さんが日本ペンクラブのフォーラムなどで、折々に歌う曲だ。川島さんの「この街で」は、新井さん同様に感動をうまく歌唱していると思う。
CDは 『四季のうた』(ダニーボーイ、アメイジンググレイス、津軽のふるさと、百万本のバラほか)などがある。それらは聴く人の感動を誘う。
彼女のCDはすべて「手作りCD」である。世界の愛唱歌や名曲、明治から昭和までの叙情歌を選曲する。そして、演奏家や音響のプロの友人の力を借りて、デザインや入稿、選曲から、音の選定まですべて自分で手がけている。