『読書の秋に読もう・推薦図書』 南太平洋の剛腕投手=近藤節夫
旅行作家兼エッセイストの近藤節夫さん(日本ペンクラブ会員)が、初のノンフィクション作品『南太平洋の剛腕投手』を刊行した。サブタイトルは「日系ミクロネシア人の波瀾万丈」である。発売日は8月18日。出版社は現代書館で、1600円+税。
作品は昨年来から取りかかっていたもの。主人公はススム・アイザワ(相澤進)で、日本人の父と、旧トラック島(現ミクロネシア連邦)酋長の娘との間に生まれた。戦中・戦後に父の故郷・藤沢市で、彼は逞しく成長した。そして、プロ野球投手として活躍した。
その破天荒な生涯を描いている。
ススムはプロ野球を辞めた後、トラック島へ帰島し、大酋長となった。実業家として成功した彼は、島のため献身的にボランティア活動に携わってきた。当然ながら、島民から広く尊敬を集めた。
作者の近藤さんは、親の代から交流のある森喜朗元首相、そしてプロ野球の元チームメートだった佐々木信也氏と、ふたりの友情の絆を同書で扱った。それだけに、奇想天外のドキュメントだともいえる。
30数年前、作者はトラック島で大酋長と初めて会った。ススムは行動力のある魅力的な人物であった。一方で、謎をはらんだ言動の多い人物だった。そのミステリアスな点についても、証言、風評を交え、取り上げてている。
偶々大酋長がすでに鬼籍に入られていると知った。
「もうあのカリスマ的な風雲児に会えないのか。そう思うと無性に寂しい気持ちに捉われました」
近藤さんには懐かしい気持ちが湧き上がった。大酋長の生涯を二つのふるさと・旧トラック島と湘南地方を背景に描いてみたくなったのです、とペンを執った動機を語る。
『南太平洋の剛腕投手』は江ノ電沿線新聞社が、湘南地方、とりわけ江ノ電沿線に住民に読んでもらいたいと、座談会を催している。
佐々木信也さんは、湘南高校時代に甲子園初優勝を成し遂げている。ススムの親戚の藤沢市商工会議所副会頭・相澤光春さん、そして佐々木氏の母校後輩となる筆者の近藤さんがトークを行った。座談会の内容については、「江ノ電沿線新聞」9月1日号に掲載される予定である。
【著者の刊行案内から、取りまとめました】
【作者・プロフィール】
東京・中野生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業。学生時代に60年安保闘争、ベトナム反戦運動に参加した。
学生時代・サラリーマン時代を通して、紛争地や戦地に200余り渡航している。訪問国は70数か所になる。
著書として
『現代 海外武者修行のすすめ』(新風舎)
『新・現代 海外武者修行のすすめ』(文芸社)
『停年オヤジの海外武者修行』(早稲田出版)
共著として
『知の現場』(東洋経済新報社)
『そこが知りたい 観光・都市・環境』(交通新聞社)