X010-What's New

【孔雀船105号 詩】 夜空の向こう側 脇川郁也

ふり返ると
紫色の空にいくつか星の光が見えた
見晴台から望む街の夜景を眺めながら
あのひとつひとつに
だれかの家庭があるんだねと
あなたはつぶやいた

なだらかな長い坂道を
ふたりで登った
いつの間にか息が上がっていて
そっとつないだ手を引き合って笑った

明かりの数だけある家庭で
暖められる笑い声もあるけれど
時がたつと
あきらかな月の光が
いつの間にか雲にかすんでしまう

知らぬ間に闇が降りてきて
世界を覆ってしまうことがある
どれだけ手を伸ばしてみても
届かないもどかしさに
秋の風はいつも吹き来るのだ

虫が鳴いているね
あれはね、羽を擦り合わせているんだ
恋する人を呼んでいるんだ
でもそれが
哀しげに聞こえるのはなぜだろう

ワイン.jpg予約したのは
夜景がきれいなレストラン
すこし気取って
ぼくらはワイングラスを傾ける
弾けるようなグラスの音に
見つめ合って笑顔を交わした

夜空の片隅に星が流れた
遠く音もなく
光を点滅させたジェット機が
飛んで行く
ポケットの膨らみは君に贈るプレゼント
どこにも月は見えなかった

夜空の向こう側(脇川.pdf


【関連情報】
 孔雀船は105号の記念号となりました。1971年創刊です。
「孔雀船」頒価700円
  発行所 孔雀船詩社編集室
  発行責任者:望月苑巳

 〒185-0031
  東京都国分寺市富士本1-11-40
  TEL&FAX 042(577)0738
  メール teikakyou@jcom.home.ne.jp

イラスト:Googleイラスト・フリーより

「What's New」トップへ戻る

ジャーナリスト
小説家
カメラマン
登山家
わたしの歴史観 世界観、オピニオン(短評 道すじ、人生観)
「幕末藝州広島藩研究会」広報室だより
歴史の旅・真実とロマンをもとめて
元気100教室 エッセイ・オピニオン
寄稿・みんなの作品
かつしかPPクラブ
インフォメーション
フクシマ(小説)・浜通り取材ノート
3.11(小説)取材ノート
東京下町の情緒100景
TOKYO美人と、東京100ストーリー
ランナー
リンク集