10月24日(月)は快晴ならば、中禅寺湖の紅葉が見事な季節だ。
東武電車が朝かすみの利根川を渡り、栃木県に入ると、車窓は斜雨で濡れはじめた。男体山(2484.2m)登山にむかう。山の天候がしだいに気になってきた。同山は急斜面が連続する、直登だけに、降雨だと、古(いにしえ)の修験者のように難行苦行となる。晴れの山と雨とでは、登山の軽重が雲泥の差となる。
日光駅に近づいても、沿線の山々には雨雲が深く被さっている。
肥田野さんはITコンサルタントで、私とは6年来の登山仲間だ。かれがIT企業「インフォ・ラウンジ」(横浜)を興してから5年経つ。この秋には増資をして、役員も整え、次なる飛躍への地固めをしていた。
「役員研修に、登山を入れました」と結束かためが目的の一つだと話す。他方で、肥田野さんは同社に「インフォ・ラウンジ山岳部」を設立していた。
私は、同山岳部の顧問という大義の同行だった。葛飾住まいの私は浅草に近いし、早朝の出発は楽だった。他の4人のメンバーは横浜に住む。それぞれ自宅の最寄り駅から、浅草まで遠い。
浅草駅から乗ったのは肥田野さんと、横浜・戸塚の小林さんだ。小林さんはITデザイナーで、9月から同社の役員に加わっている。自宅から戸塚駅までバイク、横須賀線、新橋駅から浅草まで銀座線と乗り継いできたという。
車中では、肥田野さんと小林さんがiphoneで、日光の天気予報を調べる。午前中は雨、午後は曇り。このところ天気予報の精度は高くなり、よく当たる。それだけに、雨の登山の覚悟を決めた。
同社の伊藤さんは高校時代に山岳部員だった。東工大に進んでから山は登っていないが、9月の奥穂高では健脚ぶりをみせている。彼はおなじく横浜住まい。最寄の路線の始発電車を利用しても、浅草駅6時20分発の快速には間に合わないので、東京駅から新幹線「やまびこ」を利用し、宇都宮から日光線に入ってくる。
同列車には若山さんも加わっている。私立・桐朋高校の1年生の時に、学校行事で登山をした。山はそれ以来だという。
かれらは理系のITコンサルタント。会社は平均年齢が31歳だという。日ごろフィットネス・クラブで汗を流しているから、体力はある。そこに60代作家の私が一人加わった、5人パーティーである。
晩秋の日没は早くて4時40分だが、5人の体力からしても男体山の山頂に登っても、陽があるうちに降りられるだろう。
日光駅に着いても細い雨が降る。登山中にカメラを濡らさないためにも、私は駅構内の売店で、透明の折り畳み傘(500円)を購入した。ひとり傘を持つ身となった。
湯元行きのバスが、いろは坂を登る。中禅寺湖でも、車窓の側に雲が流れる。紅葉の情景など楽しめなかった。
二荒山神社前のバス停で、5人が集合した。
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