仙丈岳と甲斐駒岳に登った男たちと、山頂に登らない奴の物語り。(下)
更新日:2015年10月 2日
黙々と登る。ひたすら登る。これしか道はない。
青い空に、地球の美を感じる。雄大な心にもなれる。
でもさ、イジケルのもいる。
「ぼく、疲れたんだもの」
だれも背負ってくれない。
それが山里の厳しさだ。
まだ、あんなに遠くにあるの、きょうの目標は。
泣き言をいっても、距離は縮まらない。
ひたすら歩くのみ。
笑顔で歩く者もいれば、うつむいて、うな垂れて、ただ歩く者もいる。
「えっ、うそっ。ここはまだ頂上じゃないの」
山は偽のピークがたくさんあるのさ。
蝶々にも、心する。
ゆとりが欲しいね。
甲斐駒ヶ岳は快晴だった。
仙丈岳は、寒かったな。
ともかく、2座を登れた。
笑顔で、撮りなおしだ。
笑えるじゃんか。まだ余裕があるね。
もう一座・3000m級はどうかな。
もう、登らなくてもいいんだ。
この感動が良いね。
「後ろ向きの発想でも、好いんだよ」
山はなにしろ、前に向いてしか、登れないのだから。
山って、人生が学べるよな。
来年は、どこの山岳にするかな。祝「山の日」がスタートする。上高地が第1回目の大会の開催地だ。
上高地から登れる山にしよう。それだけは決まった。
【関連情報】
穂高健一著「炎」が日本ペンクラブ・電子文藝館に掲載されています。
この作品は、仙丈岳を素材にし、若者の過酷な山岳レスキューを追いもとめた、文学賞作品です。