仙丈岳と甲斐駒岳に登った男たちと、山頂に登らない奴の物語り。(上)
こうして威張っていなければ、山男じゃないよね。「その実、なんど音をあげそうになったか」という登攀(とうはん)ちゅうなど微塵(みじん)も、見せない。気づかせない。ほほ被り。
山は達成感だよね。
ここにも、一人いたよ。良い顔しているね。「双児山」って知っている? 知らないって。「長谷村」ってわかる? まったく聞いたことがないって。そんなこと言うと、村民の選挙でえらばれた、村長さんが怒るぞ。
ともかく、山頂の達成感はたっぷりだよね。
9月14日から、3泊4日の豪華な超ゆとりのある登山だった。
だれだ、こんな山小屋を選んだのは、と登る前から、グチが出る始末だ。なにしろ、北沢峠のバス停から、まずは下るのだから。
「ふつうは登山口から登るよな」
ぼやくこと、ぼやくこと。
樹林帯の登山道は、森林浴だと言い、喜ぶ奴もいれば、こんなコースは選ぶなよな、もっと景観のよいところにしろよな、とふてくされる奴がいる。
この性格の差だけは、親の代から引き継ぐから、治しようもない。
ならば、視界の良いところに出ましょう。
いいね。とても、好いね。この砂礫(されき)の白い山は……。
前を視るか、後を見るか。山は自由がいっぱいだね。
都会生活から、解放させるよね。おい、おい、田舎生活だって、悩みが多いんだべ。
こんな貴重な写真は、生涯に2度と撮れないかもしれない。
左を写す女性、右を写す男性、さらには足下を写すひと。この3人を撮った当事者がいるのだから、合計4人はまったくバラバラだ。
登山はチームワークが一番大切だ。そんな山岳技術書を世に出した人も、このなかにいるくらいだ。書くこととやることは違う。
これまた貴重な存在だよね。
ともかく、とても良いシャッターチャンスだな。
早く登ろうぜ。
山はあせりは禁物だ。遭難のもとだ。
だからと言って、日が暮れたら、遭難しないのかよ。
鰐(わに)にかみつかれる感じだな。
岩を潜っているとき、崩れたら、どうする?
自己責任だよ。すべて己の責任で登る。まあ、山には神様がいるから、神頼みが良いんじゃないの。
岩よ、山よ、われらが……、という唄があったな。
あんなの下山してから歌うものだよな。
写真提供:インフォ・ラウンジLLCの伊藤・小林さんの両名です。
どんな業種かって? 解っていたら、書くよ。
会社概況としたら、平均年齢が30歳代半ばで、男はやたら山好き。反動で、山ガールが入社しない、山嫌いなウーマンばかり。きっと、そんな会社だね。
なにしろ、ここ10年間、在籍する女性社員はいちども山にきたことがないからね。
年輩グループ「すにーかー倶楽部」とは、年に一度、合同で、高所登山をしています。