「山の日」から、安全のための地域整備を考えよう(5)=東京・有楽町
東京・有楽町の「東京国際フォーラム」で開催された。3月29日(日)は2日目で、フォーラムのメインテーマは「山と自然の安全」だった。
藤原忠彦さん全国町村会会長(長野県川上村長)が冒頭の挨拶に立った。「山と、自然と、森を愛する人たちのあつまりです。飛行機、新幹線は人間の手で作ったもの。山の場合は、武田信玄の風林火山『動かざるもの山の如し』というように動かずしても、突如、危険が迫ります。安全を考え、山を上手く使っていきましょう」
安全面からしっかり討議し、勉強してほしいと述べた。
宮崎茂男さん(長野県・山岳救助隊長)は、「遭難現場を知って、知識を持って、帰ってもらいたい」と述べた。
遭難はここ10年間で、1.6倍になった。平成25(2013)年は2172件である。その中で、長野県は14%を占めている。
携帯電話などで110番が入りやすくなり、GPG機能で所在地が判りやすくなった。それを受けて、警察、消防、民間の救助隊が出る。山は特殊な場所であり、航空隊が出られない場所、悪天候などは、地上隊員が遭難者を背負って降ろすことになる。
その事例が画像で紹介された。
八ヶ岳の遭難者がビーコンをもっていた。手袋の発見から、雪崩に埋まった遭難者を発見する過程が説明された。
御嶽山の噴火災害は死者が57人、行方不明5人の事例に対する、救助活動が写真で紹介された。そこには傷ましい姿があった。
「へリーや通信機器の発達で、死者は少なくなってきました。しかし、救助隊員も命がけであり、二重遭難もある。これらも念頭においてほしい」
殉職者の数が示された。
平成21年9月は3人 岐阜県・穂高
平成22年7月は5人 埼玉県・秩父
平成26年9月は1人 愛媛県・石鎚
登山者は自分の責任で登ってほしい。「体力、知識、技術、装備」の面でチェックして、山に入ってほしい。
杉下 尚(ひさし)さんは、岐阜県危機管理部の防災対策監である。
最近の登山ブームで、岐阜県でも遭難事故が増えている。発生件数の6割が、北アルプスである。
事故を見ると、技術不足、装備不足の無謀登山が多い。その上、登山届は6割しか出ていなかった。これらのことから、同県は「登山届出を義務化した」と、杉下さんは条例化の根拠を説明した。
遭難事故の多い北アルプス地域と活火山地区を対象としている。登山届をしない、虚偽をした場合は、5万円以下の過料を適用する。登山時期によって、エリアを変更する。
昨年の御嶽山噴火の折、登山届が出されていない人がずいぶん多かった。救助関係者は、遭難者数の実態がつかめず、初期捜索で混乱をきたした。その記憶がまだ新しい。
昭和41年に東京消防庁に「消防防災航空隊」が初めて配備された。長野県は平成9年に配備された。山岳救助、水難救助、捜索に出動している。
長野県は標高3000メートル級が15座、日本百名山は29座ある。急峻な山が多く、登山者が多い。へリーは強風、突風だと、遭難現場の真上に来ても、ホバリング(空中停止)できない。
「朝の早い内は、割に安定しています。この日の救助はダメだと判断しても、へリーのプロペラ音を聴かせてあげようと、旋回したりもします」
へリーが気づかなかった、と思うと、失望から死に至るケースが多い。厳しい天候のなかで、こうした配慮もなされている。
信州ドクターヘリ―としても、活躍している。
「困ることは、地上で、誰もが手を振るので、どこが遭難現場かわからないことがあります」
そんな笑えない事例も、中山さんは切実な問題だとして披露した。
「救助要請のタイミング(判断)には迷いがあるかと思います。へリーの早期発見には、早期通報が大切です」
と結んだ。
パネルディスカッションは、渡邊雄二さん(国立登山研修所長)が座長だった。会場からの質問も踏まえて、それぞれパネラーに振り分けていく。
登山届の重大さが解っていながら、30-50回も登っている山だから、慣れているから、まあ、いいや。そんな気持がひとたび事故が起きると、命取りになる。油断大敵である。
救助は110番、119番、どちらでもよい。
岐阜の条例において、登山届の一部例外は、新穂高ロープウェーの観光や、林業、山菜取りなどである。「登山者は出すべきものは出す」
それは、どの県においても、同様である。
日本山岳ガイド協会「「コンパス登山計画」を利用してもらえば、登山者の所在が家族や友人たちと共有できる。
有事が起きた際の初動対応(警察への連絡やルートの確認等)が迅速・的確に行える。
御嶽山の災害現場の救助活動は、TVで見る以上に、過酷だった。
日本百名山のうち、32座が火山である。御嶽山の災害を教訓に、ヘルメットを着用するとか、逃げるルートを常に意識するとか、リスク管理をしっかり行って登ってほしい。