【図書紹介】 地図「富士山・村山古道を歩く」改訂版=海抜0mから富士山
最近は若者の間で、登山人気が高まっている。山ガールという言葉も生まれ、登山スタイルもファッショナブルになり、カップル登山も多い。最大の人気は富士山と高尾山だろう。
首都圏から手軽に登れる高尾山は、いつの時代も多くの人に愛されている。富士山はむろん有史以来、日本人に最も親しまれてきた。江戸時代には「富士講」ブームも起きている。ところが、戦後の登山ブームを境に、
「富士山は見る山で、登る山ではない」
と登山愛好者たちから嫌われた。
その理由は登山道沿いの山小屋から排出される、ゴミや糞尿の未処理など劣悪な環境が影響していた。
世界文化遺産を目指す富士山は、ここにきて急激に環境改善が進んだ。と同時に回帰現象ともいうべきか、いまや富士山の登山ブームになっている。
富士五合目までバスで行き、そこから山頂を目指す。多くはご来光目的である。
こうした一般登山には満足せず、東海道の田子の浦(海抜0メートル)から富士山頂(3775m)を目指す、富士古道ルートをもとめる登山者も増えてきている。
村山古道は富士修験者たちが通った、主要な登山道だった。つまり、仏教徒によって切り拓かれた道である。明治政府の廃仏毀釈による仏教の弾圧、その後の富士山の新道開発から、村山ルートは廃れてしまった。
最近になって、村山集落の有志により、古道の掘り起こしが行われた。ただ、道の整備まで手が及んだわけではない。地図・磁石が使いこなせないと登れないルートだ。
田子の浦から古道の登山口まで約1日かかる。市街地を通り抜けるには、ガイドブックがなければ、道に迷うし、難儀する。村山古道のガイド付きとなると、割高になる。
それを解決したのが、2009年7月に初版された畠堀操八著の地図『富士山・村山古道を歩く』である。
2012年4月に同改訂版(頒価1000円)が発行された。
同地図は海岸から山頂まで、国土地理院の2万五千分の1を複製し、細長い一枚にしている。持ち運びが手軽だ。迷いやすい都市部は写真とイラストが入っている。
「ここを左に曲がる」「斜め向こうに渡る」「道しるべ」と写真キャプション(説明)付きだから、わかりやすい。
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村山古道に入ると、やがて森林地帯になり、視界の悪さがともなう。等高線の要所・要所から見える写真付きだから、これも確認が容易である。
著者の気配りだろう、地図の一角には「等高線は10メートル間隔、距離は4センチが1キロになります」と、そのメモリも明記されている。宿泊所、観光協会、山岳救助隊など連絡先一覧も一枚のなかに収っている。
改訂版では、市街地のコンビニ(トイレが利用できる)の再調査がなされている。標高1000メートル未満は民有地のために、3年間経てば道路が変化しており、迂回路情報なども記入されている。
初版はコート紙を使っていたが、それではどうしても雨に弱い。改訂ではユポ紙の使用により、雨にも負けない材質で、耐久性が増している。その上、折り目もしっかりしているので、登山服のポケットに入れやすい。
海抜0メートルから、村山古道ルートを通り、山頂を目指す登山者には必須の地図である。
古道は草が茂り、倒木を越えたり、ガレ場もある。矢印などで案内される整備された登山道ではない。地図・磁石が使いこなせる登山経験者にかぎられる。初心者だけでは無理なコースだと書き添えておきたい。
【関連情報】
発行所:NPO法人シニア大樂・山樂カレッジ
事務局長・畠堀操八
☎・Fax 0466-83-1373